57.2人の告白
太陽暦1305年12月終旬 希京
ここ数日、柳泉はボーッとしているときがよくあります。しかし、そうかと思えば机に向かって何かを書き記していることもあります。
この方も新たな部署で補佐長という立場になって大変なのだと、妻になった私があれこれ言うのも悪いと思いソッとしていました。
しかし、あまりにも見ていて危なっかしいときがありすぎたので明日聞いてみようと決心しました。
幸いにも明日は柳泉もお休みを頂いているそうです。
相も変わらず私の布団には入ってこない柳泉の背中を見ながら私は目を瞑りました。
実は明日のちょうど1年前、私が柳泉に下贈された日なのです。この御方はそのことを覚えていてくれているのでしょうか?
そしていつものように何もなく意識がなくなってきたとき、微かに物音が聞こえたのです。間違いなくその正体は柳泉でしょう。こんな時間に一体どうしたというのでしょうか。
その直後、わずかに布団がめくられて何かが私に触れました。
目を開けてみると、目の前には柳泉がいます。穏やかな表情で私を見ていて、目が合うとにこりと微笑んでくれます。
「どうされました?」
「嫌でしたか?」
嫌なわけがありません。わかっていて聞いているのであればとても意地悪です。
声に出すのは悔しくて、わずかな抵抗として小さく首を振りました。
「それは良かったです。実は大事な話があります」
「大事な話ですか?明日ではいけませんか?」
真面目な顔で首を振る柳泉に思わず魅入ってします。それにしてもそれほどまでに大事なこととは・・・。
どんな話が飛び出してくるのか分からず、どうにか柳泉の表情から読み取ろうと試みてみましたが、なにもわからない。それが私の不安をとても煽ります。
「今までずっと黙っていましたが、私の初陣が決定しました。と言っても私が行く場所が戦場になるかは分かりませんけど」
「え・・・」
柳泉は陸宰相様について色々学んでいたから、てっきり文官として仕官するのだと思っていました。しかし、初陣と柳泉は言った。
「これまでずっと内密にされていましたが、それも数日後には多くの民が知ることになるでしょう。ですからその前に希京様に言いました。俺は鶴城にて主様主導で行う越内国侵攻作戦の後方支援を任されました。そして何かあれば鶴城で敵と戦います」
気がつけば私は同じ布団にいる柳泉の寝間着を強く握っていました。少しクシャクシャになっても柳泉は気にしません。ただ優しい目をして私を抱きしめてくれました。
「だからというわけではありませんが、俺も覚悟を決めました。その・・・鶴城に向かうまでまだ少し時間はありますから、それまでは同じ布団で寝てもいいですか?」
「ようやくですね・・・。私、てっきり避けられているのかと思いました。一度は別の御方に嫁いでいましたから」
「そんなわけ無いじゃないですか。私はずっと希京様を愛していました」
恥ずかしくてまともに柳泉の顔を見ることが出来ません。顔を合わせないために柳泉の胸へ顔を埋めてみました。すると驚くほどに心臓の鼓動が早いのです。
恐る恐る顔を上げてみると、おそらく私と同じように顔を赤くして私を見ている優しい瞳がありました。
「・・・優しくしてください。私はまだ・・・・・・」
私の言葉を聞いた柳泉様は驚いて目を見開かれていました。それも当然かもしれません。
でもその直後さらに強く抱きしめられた気分は悪くありませんでした。
その日、私は初めて・・・・・・・・・。




