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49.越内国討伐作戦案

活動報告にてここまでの登場人物を纏めています。現在は海興国の王家の紹介だけですが随時投稿します。記事投稿日は、本編の投稿はお休みします。

今回は裏設定も書いているので、そちらも読んでいただけると嬉しいです。

太陽暦1305年5月初旬 柳泉


「恐れながら私が思いますに、それこそ隠居殿と江景晴様の思惑通りかと」

「どういうことだ」

 前、婚姻同盟が成立した際の懸念を主様に話した。

 そして今回、それがいよいよ現実的なものとなってきた。というのも、江政長様は主様を後押ししている立場であるが、未だ近陵国は一枚岩とは言えない状態になっている。そして、さっきの主様の話が事実なのであれば今回の一件、越内国も絡んでいることになる。

 江家の家中の事はよく知らないが、隠居だとしても王国朝家の三子の義父であるという事実は変わらない。ようするに江家は大きな2つの派閥が存在することになるわけだ。かたや現当主率いる親海興国派、かたや隠居・有力家からの養子率いる親越内国派。そしてどちらの派閥にもそれぞれの国との繋がりを持っている。

「近陵国を通って越内国に侵攻すれば近陵国は裏切ります。隠居殿や景晴様、朝景雨様の理想を実現させるのであれば、政長様が裏切ったように偽装するでしょう。そして海興国軍を殲滅した後、裏切り者として海興国派から信を失った政長様を消して復権または景晴様を嫡子に任命するでしょう。どちらにしても親海興国派の政長様がいなくなれば間違いなく我らにとっては逆風になるでしょう」

「しかし、であれば尚更越内国を許すわけにはいかん。どうすればよいと考えておる」

 主様は俺の意見を求めている。「どうする?」か。

 俺も越内国を許すという選択肢は無いと思う。出来ることなら恵楽での一件同様に徹底的に打ち負かす必要がある。

 でなければ北の国境付近の領主や民は不満を持つだろう。

 しかし現状行軍ルートは近陵国を通るしか無い。さてどうするべきか。

「知恵者として名をあげた柳泉殿でも難しいですかの」

 羽鶴殿が腕を組みながらため息を吐かれた。主様や呂登殿も表情は暗い。どうにか期待には応えたいけど、良い案が・・・。

 待てよ・・・。さっき書庫で見た地図、アレで感じたことがあったんだよな。

「羽鶴殿」

「なんでしょうな」

「書庫に人をやってもらえませんか?」

「書庫ですと?そういえば鶴翼が案内したそうにございましたな。一体何を?」

「書庫には今私の部下がいると思います。その者に私が見ていた本を全て持ってきて貰いたいのです」

 そう言うと、納得はしていないものの外に控えていた鶴翼殿にそう伝えた。

「何を思いついたのだ」

「私の懸念を全て解決してくれるであろうものを見かけました。部下が到着次第、お話いたします」

 それからしばらくして、大量の本を抱えた春岳が緊張した面持ちで部屋へと入ってくる。

「春岳、ご苦労。」

「はい、では某は外へ待機しております。必要なものがあればまたお伝えください」

「うん、よろしく」

 そそくさと春岳は出て行った。

「ではまずはこれです」

 俺は一冊の本を手に取ってあるページを開く。

「これは鶴郡を中心とした付近の地図であるな」

「はい。北には近陵国、北東には越内国が描かれております。この地図でも分かるように平地で越内国と接しているのは近陵国のみです。普通に考えれば越内国までの行軍ルートは近陵国を通るしかありません。誰もがそう思うでしょう。しかし越内国は南北を険しい山地

脈に挟まれているため、あまり重視されていませんでしたが海興国も接している場所があります」

「白轟に任せておる西璋郡であるな。西璋は龍尾山脈の麓一帯の事を指しておるが、正確には龍尾山脈の山頂までが西璋郡領内である。それより向こうは越内国だ」

「はい。ですからそちらを使えば部隊は送れぬとも兵糧くらいはどうにか輸送できるかと」

 俺の考えに最初はうなり声が聞こえたが、すぐに止んだ。この計画には根本的に大きな問題が存在している。

 それを口にしたのは呂登殿だった。

「そもそも道も整備できないほど険しい山故、領地整備区域から外されているのだ。そんな危険な地を使ってどう兵糧を運ぶ気だ」

「坑道です。領地視察を行った際、宰相殿が自慢されていた鉱山開発の地を見学させて頂いたのですが、現状大陸における最高峰の安全管理を施しており危険は最小限に抑えられていました」

「なるほど、坑道を使うか。しかしそれはあまりにも」

「無謀だと思いますか?むしろ虚をつく良い案だと思うのですが。近陵国が万が一裏切り討伐軍の兵糧線が切られたとき、別の兵糧輸送方法があれば随分と状況は変わると思います」

 呂登殿は再び黙ったしまった。羽鶴殿も唸っている。

「その策まことに上手くいくのか」

「徹底的にこちらからの情報を隠し、討伐軍を侵攻させた際に各々が持ち場の役割を最大限果たせば裏切りがあったとしても負けぬと思います。逆に言えばどこかが狂えばあっという間に瓦解しかねません。それは討伐軍のみならず海興国にまで影響するでしょう。言うなれば・・・これも賭けですね」

 釣り野伏せといい俺は賭けが大好きらしい。ギャンブルで勝ち続けられるのはイカサマ師だけだ。いつまでもこんなこと言ってらんない。

「ぬしは賭けが大好きらしいな」

 そういう印象がついてしまった。不本意だけど仕方が無い。現にそんなことばっかり言ってるし。

「まぁよい、ぬしの策詳しく話せ」

 どうやら今回も責任重大らしい。

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