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46.難攻不落

昨日の投稿サボりました

太陽暦1305年5月初旬 柳泉


「にしても大きい城ですね」

「あぁ、ホントにデカいよ。そしてなんか凄いな・・・まるで要塞だ」

 主様が長会談を行うという鶴城についた俺達は、これまで行った領地にはない立派な城を呆然と見上げていた。

 これはアレだ。海興国にとって北の防衛の要になる城だ。そう思った。

 今回同行しているのは春岳。最近山賊が活発だという山道を通過する必要もあったし、何よりも鶴郡は北の国境最前線だ。

 何があるか分からないと言うことで、高白轟様推薦の武人である春岳を連れてきた。

 ちなみに鶴郡の領主である旺羽鶴の三子で、現在領監部にいる旺輝は身内贔屓をする性格に思えはしないが、やはり認めることは出来ないと、紅林殿とともに恵楽郡に向かった。

「この城は海興国が成る前から、何度も外敵からの侵攻を防いできたそうです。しかしこの地が大陸の中央と南を繋ぐ要地に違いはなく、幾度も侵攻されたようです。代々この地を治めてきた旺家当主らは、それに対抗するために城を要塞化。これでは誰も落とせないでしょうね。柳泉様ならどうされますか」

 以前にも話したが、領監部にいるメンバーの多くは俺の活躍(?)を知っている。そういうこともあって元々軍部にいた春岳はこの手を話をよく俺に振ってくるのだ。

 ただほぼ素人の俺にそこまで期待されても困る。実際、話を聞いていてよく感心させられるのだから。

「ん~、落とせないのなら無視だな」

「・・・無視と言いますと?」

「見たところこの城、城門から天守まで広大な土地を持っているにもかかわらず兵の収容人数はそこまで多くないとみた。まぁそうだろうな。旺家は内政に熱心で、領地の獲得にはそこまで熱心で無かったと聞く。そこまで兵を抱える必要はない」

「たしかにその通りですね。なるほど、城を守ることだけに特化していると」

赤兎から降りて近場をグルッと回る。やはり通路は狭く、複雑に入り組んでいる。

大軍で押し寄せたとしても、ここで兵を分散する上身動きも取りにくい。やはり攻城するのは簡単なことではないと思った。

「だから無視する。最低限敵を迎え撃てる部隊を残して周りの小城を落とす。孤立すればあとは兵糧攻めでも何でもすればいい。出てくるのであればその少数の敵兵を、残した部隊で滅する。ただしやはりこのやり方だと時間がかかるだろうな」

「しかし城は落とせます」

 少し遠くから数人がこちらに歩いてきているのが分かった。

 きっと領主旺羽鶴殿の長子である旺鶴翼殿だろう。

「なにやら怖い話をされていますな」

「いえいえ、ただの雑談ですよ。こんな立派な城を見せつけられては、誰でも考えてしまいましょう」

 さすがに場所をわきまえるべきだった。ここは旺家の心臓とも言える鶴城の中なんだ。不快感を覚えられたら領監部は終わりとまでは言わないが、やはり良い状況とは言えなくなる。

「ですが、そうですか。柳泉殿はこの城を無視するのですね。となれば周辺の城も強化しなければいけなくなる。これは帝銭が明らかに足りませんな。困った困った」

 しまったな、鶴郡が北の要地であるということは周知の事実。城の改修のために費用を出して欲しいと言われたとき、財政省の前に話が通るのが白轟様と各領地の状況を把握している領監部になる。

 ここで協議し費用引き出しの交渉を宰相殿を含めて財政省に行う。つまり俺がこの場で、城の改修が必要、またはそれに近しいことを言った場合鶴郡は費用を用意してくれと提案してくるわけだ。

 実際国防だし、帝銭はかなりあるから使っても良いのだがそれだとこっちもこっちもでかなり出費する可能性もある。

 そこまでいくと危険だろう。

 だから特に金に関しては迂闊なことを口走れない。

「大丈夫ですよ。今はこの地も海興国の一部。鶴郡のピンチとあらば主様は必ず援軍を派遣します。それこそ恵楽の戦いのように」

「でしたな。あの勝ち方は鮮やかなものだったと弟から聞いております。柳泉殿発案の釣り野伏せなる策で、敵を壊滅させたと。その時の功で弟は李白雲殿の率いる弓兵の一隊を預かるまでに出世しました。兄としてなんと礼を言えば良いか」

「いやいや、あれは現地の皆さんが上手くやってくれたに過ぎません。単なる思いつきでしたからね」

 そう、ホントに思いつきだった。まさかあれほど上手くいくとは思っていなかったんだ。それのおかげで今の立場にまで来たわけだけど、やはり褒められたり感謝されたりするのはわるいものじゃない。

「そろそろ行きましょう。今頃主様は長会談を行われている頃です。会談が終わり次第柳泉殿を主様のいらっしゃる部屋へ招くよう言われておりますので、その時また案内いたします」

 俺達は旺鶴翼殿について鶴城へと入った。

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