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47.支援者

太陽暦1305年5月初旬 柳泉


 どうやら長会談はなかなか有意義なものになっているらしく、鶴城に入城してからしばらく経ったがいっこうに呼ばれる気配がない。この時間はわりと勿体なくて、何か俺に出来ることはないか考えることにした。

「柳泉様、少し外を見て回りませんか?」

「主様を待たせるかもしれないだろ?さすがにそれは出来ないな」

「しかしやはり時間が勿体ないと思います。柳泉様の目的はあくまで領地視察であって、主様がこの地で長会談を行っているのは偶然ではないですか」

 そう、春岳の言うとおり俺達は偶然この地で主様と会ったのだ。正確には、そういうことになっている。

 俺が主様の様子をうかがいながら行動するのはオカシイのだが、それでも仕方がないだろう。

 だって主人なんだから。

「わかった。じゃぁ城の書庫に行こう」

「書庫ですか?」

 本とか書類とかが苦手な春岳は眉をしかめる。しかしまぁ領監部に来たからにはその手のことから逃げることは出来ないだろう。

「あぁ、外に出なくても書庫にはこの地の歴史や状況を知る本があるだろう。そこで鶴郡や旺家について調べる。これなら主様に呼ばれてもすぐに向かうことが出来るからな」

「では某はここで」

「春岳も来るんだよ。1人では調べるにしたって限界があるだろ。鶴翼殿、よろしいでしょうか」

 可笑しそうに俺達のやりとりを眺めていた鶴翼殿に声をかけた。10歳ほど年の離れた鶴翼殿は俺達を弟を見るかのような目で見ているときがある。

 旺輝が俺の1つ上だから、まぁそんなところだと思う。

「ではご案内しましょう」

 鶴翼殿は前を歩いているのだが、1つ気になることを聞いてみる。

「鶴翼殿は私を不快に思わないのでしょうか?俺は新参者にもかかわらず各領地を監視する部署の補佐長になっています」

「たしかに最初は思いましたよ。私は旺家の跡継ぎの座を確約されているとはいえ、やはり私より10も若い者が中央で主様に重宝されている。羨ましい話だと。」

「やはりそうですか」

 これまでいくつもの領地を巡ってきた。表面上は友好的に迎えてくれても内心何を考えているのか読めない奴らがいっぱいいた。

 だから、鶴翼殿に肯定されてもさほどショックではなかった。

「ですが先日、父の代理として長港へ行ったとき主様は言われました。『柳泉とは仲良くせよ』と。あの時は頷きこそしたものの納得は出来なかった。しかし今日会ってみてその意味がよく分かりました。柳泉殿を敵に回すとこの地は落ちます。先ほど1度この地は落ちていますからな」

 やっぱりあの話を、あんな場所でしたのは失敗だと思った。

 おかげで異常な警戒心を抱かせてしまった。それと同時に認めてもらえたわけだが・・・、複雑だ。

「父はこの会談を見届けて、当主の座を私に譲ると仰っています。我ら旺家は高白麗様に、そして柳泉殿を裏切ることはございません。それだけはこの場で宣言しておきます」

「私はそこまで言われるほどの者にはなりませんよ。皆さん買いかぶりすぎです」

 しかし、鶴翼殿は真顔で首を振る。

「わかりますとも。柳泉殿にはその器がある。ですから今から媚びておきませんとな」

 鶴翼殿は笑いながらまた俺達の前へ出た。

「とりあえず旺家は味方になったとみて良いでしょうか?」

「旺輝がいるんだ、露骨なことをするとは最初から思っていなかった。ただここまで評価してくれているんだ。多少は応えないと愛想を尽かされかねんな」

 春岳が苦笑した。

 俺を評価してくれる人は一定数いる。その人たちの期待に応えることは出来るのだろうか。

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