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44.大陸統一

太陽暦1305年4月下中旬 高白麗


「主様、本当に柳泉を同行させるのですか」

「何度も聞くでない。此度の一件に関しては何が起こるかまったく分からん。こういうときこそあの者の力が必要であろう。それに同行するわけではない。あやつが鶴郡に向かうのは残っている領地視察を行うためということになっておる。多少勘ぐられようが、柳泉が我らと同行することなど実際はないのだ」

 呂登は我が柳泉と同じ時期に鶴群に向かうと聞いて以降、何度も同じ事を聞いてきよる。あの時と違い、単なる警戒というものでもなくなっているのだ。

 簡単に言えば、単なる警戒の対象から得体の知れぬモノになったといったところであろう。とはいえ、今回は白轟も連れてきておる。万が一が起きたとしても弟がおれば何も心配はいらん。

「では一つだけ聞かせて頂きたい。一体何故主様はあの者をそこまで重宝するのです。たしかに面白いことを考えつくとは思います。しかしそれでも身元の分からぬ者には違いますまい。側に置いたときに裏切られる可能性もないとは言えませぬ」

「そうなれば我の見る目が無かったということよ。それにな、これから大陸を統べようという者が裏切りの1つや2つに怯えていてどうする?過去に別の大陸を統一した者がおったであろう。伝承では敵となった何人も滅ぼし、裏切った者を容赦なく切り捨てたと」

「“氷籠大陸(ヒョウロウタイリク)”の話でしたな。もとは小さな領地を守っていた一族が、ある当主に代替わりしてから1代で大陸の統一を成し遂げたという。名はシンチョウ様とう申しましたかな」

「そうだ。結局最後は最も信頼していた臣に裏切られて命を絶たれておるが、それでもいくつもの裏切りの上に成り立った大陸統一よ。我が柳泉1人のそれも裏切る可能性の低いあの者に怯えているようでは統一など夢のまた夢であろうよ」

「・・・たしかにその通りにございますね。出過ぎた真似をいたしました」

「分かれば良い。それよりももうすぐ着くな」

 我は輿から少し顔を出した。やはりそうであった。

 過去に1度だけ鶴城を訪ねたことがあったが、この城はまさに要塞という名にふさわしいものであった。

 城の作りが籠城に特化しておる。この城は王国建国前のいち領主だった旺家が何年もこの地を守るために改築を繰り返してきた城だ。

 容易には落ちるまい。だからこそ我はこの地の領主に旺家を引き続き任命したのだ。

「呂登よ」

「はっ」

「この城、ぬしならどう攻略するか」

 呂登から返事はない。輿の窓から外を見ると、馬に乗りながら真剣に悩んでいる顔が見えた。そうか、今は文官として我に仕えておるが、昔は戦場にて軍を率いていたそんな男でもすぐに答えは出んようである。

 なればよし。王国の北はしばらくは安心できるであろう。

「ではどう守る」

「やはり引きつけるべきでしょうな。あの入り組んだ仕組み上、敵の分散を効果的に行えましょう。であるならばただでさえ数のいる攻城戦において、守り側は優位に戦えましょう」

「ふむ、なるほどな。やはり立派な城よな」

「ですな」

 外を見ておると、城より多くの者らが出て来ておるのが見えた。

 ようやくである。後方には朱光と朱陽も輿にて着いて来ておる。この地で我らの新たな同盟相手が出来るかどうかが決まる。それは海興国の安寧にも繋がるわけだが、一体どうなることか楽しみである。

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