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軍師日記 ~借り物知識で異世界統一~  作者: 楼那
周辺国の動向
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41.子供達の想い③

太陽暦1305年2月初旬 朝景雪(チョウケイセツ)


 景雨様は相も変わらず、近陵国の使者と会って話している。

 本来であれば、そこにいるのは私のはず。

 今年で27歳になったわけなのだが、いっこうに私に当主の座を明け渡す気が無いような気がするのだ。

「景雨様は何をお考えなのか私には分からない」

「あまり落ち込まれますな。景雨様はよりよい状況であなた様に明け渡そうとお考えなのです」

 今、唯一私の側にいてくれているのは太陽大陸でも有数の名家、陸家の分家である越内陸家当主である“陸楓仙(リクフウセン)”のみだ。他は皆景雨様に従って、江家の使者と会っている。

 しかし私は知っている。その江家の使者というのも正式なものでは無い。

 すでに隠居の身である江長久殿と、実の弟で江家に養子として入っている景晴からだということを。

 江家の当主はこの使者を知らない。・・・勘が良ければもう気がついているだろうか。

 隠居殿は復権を、景晴は嫡子の座を狙っているのだ。

「景雨様が死ねば、次の当主は誰になる?家中では景晴を呼び戻して当主に置くという噂まで広がっているぞ」

「愚かなことです。長子である景雪様を捨て置いて三子の景晴様に継がせるなど。そもそも弟君はすでに自らの任を失敗しております。当主になったところで誰も着いていきますまい。着いたとしても、それは景雨様がご存命の間だけですな」

 楓仙の気持ちも知っている。越内陸家は、元々朝家の臣では無かった。何代も前の朝家当主がこの国に迎え入れたのだ。その時から代々この家に忠義を尽くしてくれているわけだが、楓仙の代になってからは状況が変わった。

 朝家は着実に傾きだしている。理由は複数ある。

 元々は勢力範囲の小さかった江家が領土拡張したことにより、大陸中央に領土を拡張できなくなったこと。

 朝家の2代目当主の娘が帝家に嫁いだが、それ以降は帝家となんの関係も持てていないこと。

そして今代の当主が非常にバカで愚かなことだ。

 景雨様はプライドだけで生きている。大陸の南部で大きな領土を持ち、帝家の娘を娶った海興国主が憎くて憎くて仕方が無いのだ。

 だから無意味な嫌がらせを繰り返した。しかし愚かなのは江家の隠居も同じ。

 諫めればいいものを黙認したのだ。己が国は領地が接しているというのに、だ。

 これまで攻められなかったのも、高白麗に勇気が無いと思っているがそうではない。東西の国境が安定せず、特に燕が執拗に侵攻を繰り返していたから北に目を向けていなかったに過ぎない。

 しかし昨年秋の戦において大きく状況を変化させた。大敗した燕は領地を大きく削り取られ、身動きがとれなくなった。そのうえで多くの長子道明派の臣を粛正した。

 もうあの国に再起の可能性は無い。

 東も小国ばかり、いよいよ北に目が向くといった時に当主の交代劇が起きた。近陵国からすれば危機一髪の代替わりだっただろう。

 そして当主になった江政長はいい判断をした。北の脅威を理由に南の国境を守る策を展開する。それが海興国との婚姻同盟であった。

 愚かであるとしか思えない。父も弟も隠居殿も、なに1つ大陸南部の状況を分かっていない。

「楓仙はこの国を中から変えるべきだと思うか」

「どういう意味でしょうか」

「私はこの国を見限った。今更当主についても、すでにこの国は詰んでいる。そんな国と共に心中する気はさらさら無い」

 楓仙は何も言わずに私の言葉を聞いていた。越内陸家は忠義の家である。しかしその忠義とは一体何に向けてであるか。

「私はあくまで中から変えましょう。越内国を裏切ることは出来ません。しかし景雪様は違います。正直に申しましょう。臣らの間ではすでに景晴様を連れ戻す手はずを整えだしております。正攻法においてあなた様が当主につけることはありません。であるならば・・・」

「私はこの国を出るべきであろうな。そして外からこの国を救う」

「国を出れば必ず騒ぎになりましょう。その混乱は私めが抑えます。安心して目的を果たされませ」

 これで楓仙と別れることになるとは思っていなかった。もしかすると私に着いていくと言ってくれるのではと思っていたが、やはり忠義の家とは本当だったようだ。

「外からとなるとやはり江家か高家のどちらかになるであろう。しかし江家には向かえん」

「隠居殿と景晴様ですな」

「あぁ、だから高家に向かう。どうなるかは分からない。下手をすれば捕らえられるかも知れない。だが外から変えられるとしたら間違いなく高家だろう」

「そうですな。追っ手もそこまでは追えないでしょう。では次にあなた様に会えるのは、海興国の陣中でありましょうな」

「そうであることを願う」

 私は最低限の荷物を持って城を出た。次にこの地を踏むときは全てを変えた後でだ。

人物紹介(越内国編)

朝景雪(26):越内国当主朝景雨の長子。嫡子と認められていたが、いっこうに景雨が当主の座を譲らないため、不信感を募らせる。朝家内部では三子で江家に養子入りしている野心家景晴を呼び戻すという噂が流れている。

陸楓仙(42):越内陸家の当主。国として勢いの落ちている越内国を憂い、国内より国を立て直すことを決心する。

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