4.奇妙な客人
ちょっと書くの楽しんでおります
太陽暦1304年6月終旬 高白麗
瞑想を始めてどれほど経ったであろう。我の部屋の前を誰かが歩く音がする。この恐ろしい者を訪ねるように歩くのはきっと、そう思い目を開く。それと同時に扉の外から声が聞こえた。
「主様、朱光様がお戻りになられました。謁見の間の用意は済んでおります」
「そうか。呂伏よ、中へ」
「はっ」
ゆっくりと扉が開き呂伏は部屋の中へと入ってくる。
「まだ何か言うことがあるのではないか?」
「えっ!?」
どうして分かったのか?言葉にこそ出ていないがその驚きようが全てを物語っており、可笑しくて声を出して笑ってしまう。
「まだまだだな。顔に感情が表れすぎだぞ、呂伏よ。それで何を言いに来たのだ」
指摘されたのが恥ずかしかったのか顔を赤らめながら頭をさげる。
「用件は2つにございます。1つは陸宰相殿が主様にお伺いしたいことがあると。しかしこれは朱光様との謁見の後で問題ありません」
「そうか。ではもう1つとは?」
躊躇った呂伏は、一瞬の沈黙の後重々しく口を開いた。
「奇妙な客人を朱光様が連れておられます。今父が対応しておりますが、我々ではどう対処して良いものか分からず・・・」
「奇妙とは」
「全てが、にございます。その身なりもそうですが、朱光様や許雄全殿の話がとにかく妙で・・・」
「・・・」
我の間を怒っていると感じたのであろう呂伏は慌てて平伏した。
「申し訳ございません!決して朱光様を貶すような意図はなく!!」
「わかっておる。それよりもその客人とやらは朱光と雄全が連れてきたということで間違いは無いのだな」
「はい、確かにそのように」
「では会わないわけにもいくまいな。謁見の間へと向かう。ついて参れ」
「はっ!!」
部屋からでると既に複数の家臣らが控えている。そしてその先頭には我の最も信頼している弟が控えていた。
「白轟、お前も帰っていたか」
「はい、陸宰相に急ぎ顔を出せと呼ばれたので」
“陸宰相”という言葉を聞いた呂伏は申し訳なさそうな顔をしている。この者は悪くはないのだが、どうも陸桂葉と一緒にいる時間が誰よりも長いせいでこのように責任を感じてしまうところがあった。
「それよりもお会いになるのですか?」
「既に知っていたか。あぁ会うぞ。でなければ朱光の面目が潰れるであろう。それに面白そうではないか」
目の前の白轟は思いっきりため息を吐き、後ろの臣らも顔を顰めていた
「面目よりも好奇心で会おうとされているのでしょうが、気をつけてください。先ほど少し見ましたが本当に珍妙な格好をしておりました。兄上に何かあっては・・・」
「そうなったらお前に全てを託そうか。朱光をしっかり見てやってくれ」
我が笑いながら廊下を歩くのに対して、真面目な顔で白轟らがついてくる。分かっておる。我はまだ死ねぬ。
人物紹介(今回登場人物編)
高白轟(25):白麗の弟。大将軍として国内の軍をまとめる。白麗と対立した2人の兄弟と違って最初から白麗を支持した。建国後、李雲玉の元で何度も戦いに参加し大将軍に任じられる。
許雄全(63):かつては高家の将として軍を率いていた。老齢を理由に戦から離れ、朱光の武芸指南に任じられる。




