3.厄介な隣人
物語設定
創世暦:神が最初に作り出した神創域の誕生から数えた暦
太陽暦:太陽大陸が作り出され、神創域から初代の帝が派遣され統治を始めてから数えた暦
暦の周期:・1日24時間
・1週間(木・火・土・金・水)日→1週間5日
・1ヶ月4週間20日 1週目:初旬 2週目:上中旬 3週目:下中旬 4週目:終旬
・1年間四季12ヶ月240日 1~3月冬 3~6月春 7~9月夏 10~12月秋
太陽暦1304年6月終旬 呂登
主様は自室で、西の戦線から届いた報告を読んでおられた。
「連中、ようやく引きあげたか」
「はい。李将軍の奮闘もありこちらの被害はほとんどありません。しかし今回はあちらも随分と粘りました」
私の報告に頷く主様。主様こと、高白麗様は長年隣国からの侵攻に頭を悩ませておいでである。
現状、建国当時から一切領地を奪われてはいないものの、隣国の燕国は再三にわたってこちらの領地に侵攻してきていた。
奴らの狙いは2つ。1つは一帯に広がる穀倉地帯を押さえること。そしてもう1つはその南に広がる大きな港町の確保。燕国は山に囲まれており、唯一平坦な道で繋がる国が東の海興国なのだ。
だから自ずとこちらの領地を攻め取ろうとしている。建国から14年、西の国境はずっと『李雲玉』将軍がお守りくださっているが・・・。何度目か最早数えるのも煩わしいほどの侵攻に、主様は辟易とされている。そろそろどうにか手を打ちたいところだが、正直燕国に攻め込む利点が少なすぎるのだ。
「いっそ攻め滅ぼしてやろうか。雲玉の爺さんをいつまでもあそこに置いておくのは惜しい」
「しかし、主様があの地を得たとしてあまりにも利点が少ないですよ」
「わかっている。しかしいつまでも守ってばかりだと、奴らに舐められるぞ!」
苛立たしげに机を扇子で叩く。ここ数年、撤退の報告がある度にこの様子である。そして主様に仕える臣らの間でも、燕国打倒を叫ぶものが出て来ていた。
「そういえば朱光がそろそろ戻るのではなかったか?」
「そうですね。予定通りであるならば、夕刻までにはお戻りになられるかと思いますが」
部屋の窓から外を見てみると、既に日は天に昇りきっている。
「そうか。朱光が戻るまで、この部屋には誰も通すな。少し休む」
「はっ!」
頭を下げて1人で部屋から出て行く。主様は気分を害されると、長時間人を寄せ付けなくなる。今まさにその時間なのだ。間違ってもこの時間に主様の部屋に入ることは許されない。
自身の職場に戻ろうと廊下を歩いていると、
「お待ちしておりました、父上」
「伏か。如何した?」
待っていたのは私の倅で、この国の制度上宰相に次いで2番目に主様に近い官位を与えられている『呂伏』であった。
「陸宰相より、国政に関する懸念があると報告を受けました。急ぎ主様の考えを伺うようにとのことでしたので」
どうやら『陸桂葉』宰相の指示らしい。あの女宰相は随分と倅を可愛がっている。自身の後継者として宰相の仕事の手伝いをよくさせているのだが、端から見れば体よく押しつけられているようにしか見えない。
「今は止めておけ。あの時間だ」
「・・・わかりました。そういうことならば仕方ありませんね。陸宰相にはそう伝えておきましょう」
やや肩を落とした倅の足は陸宰相の仕事場へと向かっている。きっと小言を言われることを覚悟しての姿なのだろう。
そんな姿を見送った私は改めて職場へと向かう。もうすぐ朱光様がお戻りになられる。主様と朱光様の謁見の用意を済ませておこう。
人物紹介(今回登場人物編)
高白麗(29):海興国の初代王。周りの領主を巻き込んだ後継者争いで対立した弟を倒し、巻き込んだ国々全てを巻き込んで国を興した。現在2人の妃に2人の子供がいる。
呂登(38):白麗の側近。高家の後継者争いで白麗に味方し信頼を得る。高家に対する忠誠心は非常に高い。1人息子が尚書令に任命されており、周りから呂家が厚遇されていると映らないように官位を断った
呂伏(20):呂登の1人息子。文官として高い能力を持ち、5年間の下積みを経て尚書令へ任命された。能力を評価されての任命では大陸の歴史上最年少である。尚書令の前任者は呂登である。
李雲玉(56):まだ一地域の領主だった頃の高家から仕えていた老将。大西将軍として西の燕国との国境を守る。与えられている領地には首都に次いで規模の大きな軍港を所持しており、高家に対する貢献度の高さもうかがえる。建国から14年間、何度も押し寄せる燕国の軍を撃退し続けている。
陸桂葉(41):海興国の女宰相。陸家は大陸中に分家を持っており、その宗家の当主が桂葉。高朱光の教育係と呂伏の育成も務めていた。宰相の後継者は呂伏にと考えており、日夜仕事を押しつけている




