39.子供達の想い①
昨日の投稿サボりました。申し訳ないです
太陽暦1305年1月終旬 金道明
「一体どういうおつもりでしょうか、父上」
私を呼び出した父は、何故か私室ではなく大広間にとのことだった。
不思議に思ったが今の私に拒否することは出来ない。ただその言葉に従って大広間にやってくると、おもだった家臣がすでに座っている。上座には父上が、その横には弟が座っている。
父上の私を見るときの忌々しげな顔はいつものことだ。しかし、弟はいつもの表情ではない。すぐにわかる。あれは父上が私を叱り、弟を褒めたときにする顔であった。
私はあの目が嫌いだった。この国も嫌いだ。出来ることなら母と共にそうそうに逃げ出したかった。しかし私にはそれが出来ない。慕ってくれる臣が、民がいてくれる。だから今まで影ながらこの国を支えてきたのだ。
それなのに、
「道明、お前はこの国に必要ない。あの女を連れて出て行くがよい。今なら見逃してやる」
父、いゃ武稜はそう言い放った。これまで私のことを一切認めなかったこの男はついに私に出て行けと言ったのだ。
「それは何故でしょうか?私は私なりにこの国を支えてきたつもりです」
「分からぬか、お前の存在がこの国を割っておるのだ。お前が唱えておる海興国との同盟こそが最善であると盲信した者らが多くでた。それが恵楽の地での敗北に繋がったのだ。あやうく武錬が討ち死にしかけたのだぞ」
その言葉が武錬の格を落としていると何故気がつかぬのか。武稜は弟を嫡子にしたいがために周りがまったく見えなくなっている。
挙げ句の果てが大陸史上最悪と言われた臣の一斉粛正だ。確かに族滅された多くの者らが弟よりも私を慕ってくれていた。しかし、海興国と繋がっていたと嘘をでっちあげてまであの者らを全員処刑したのだ。
「それは重臣らを処刑したからではないかと。私は止めました、今それを行えば多くの臣らがあなたを信じなくなると」
「あやつらを使って我を陥れ武錬の足下を崩そうとしたことは分かっておる。2度は言わん、この国から出よ。せめてもの情けである、追っ手はださん。2度と我らの前に顔を出すでないぞ」
武稜が立ち上がり、大広間から出て行った。残ったのは微妙な顔をしている臣らと勝ち誇った顔をしている武錬。
「そういうわけだ。もうお前はこの国に必要ない。俺がお前に代わってこの国を栄えさせる。どこぞで上り詰めた俺を見ておけ」
武錬は一ノ妃の長子だった。俺は二ノ妃の長子、と言っても先代の二ノ妃が病によって亡くなり母の序列が上がった。父はお祖父様が組んだ母との縁談を喜んでいなかった。故に長子として生まれた俺を疎んだ。
武稜の目を気にする臣らは誰も俺に気を遣うことをしなかった。いや、むしろそれがよかった。腫れ物に触れるような扱いをされるよりはマシだと、私はやるべき事をやって来た。
ただ、どうやらそれもここまでのようだ。
・・・最後にすべきことがあったな。
「武錬よ、俺は母を連れて出て行く。もし次に会うことがあるとすれば・・・それはきっとどちらかが死ぬときであろうな」
「ふんっ」
一瞬私を睨んだ武錬だったが、すぐに余裕ぶった表情になった。
死ぬのはお前だとでも言いたいのだろう。それはまだ私には分からない。
しかし私とてこのまま死ぬつもりはないのだ。
大広間から出た私は自身の荷物を持って、後宮の離れに来ていた。母は離れに隔離されている。召使いも少ない。
「母様、私とここを出ましょう。父上からの命で私の居場所はここになくなりました」
「そうですか・・・ついにその時が来たのですね。私も出て行くようにと言われましたか?」
「はい、今なら追っ手を出さぬと。共に出ましょう、この国から。そして新たな人生を見つけるのです」
母の手は震えていた。悔しいやら悲しいやら、きっと様々な感情が渦巻いているに違いない。
母は私がどんな扱いをされてもいつも支えてくれた。そんな母にこんな思いをさせてしまった私が不甲斐なかった。
私に出来るせめてもの罪滅ぼしが外に連れ出すことだと思った。
「・・・どこに向かうつもりなのですか」
「とりあえず海興国に向かいます。どこに行くにしてもあの国を通らなければいけません。その後のことはそれからでも良いかと」
「わかりました。では急いで用意をしますね」
母は離れの中へと入っていく。召使いによろしく伝えた私はある場所に向かった。
私が罪滅ぼしをしなくてはいけない人はもう1人いるのだから。




