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軍師日記 ~借り物知識で異世界統一~  作者: 楼那
恵楽の戦い
17/80

17.兵農分離

太陽暦1304年8月終旬 柳泉


「兵農分離?それは如何なるものか」

 執務室に通されて、宰相殿と話して数時間。よくここまで話し込めたものだと思う。色々この国のことを聞いてから、俺の案を聞くということになったのだが話をしてみるととにかく面白い。

 さすが国の内政を取り仕切っているだけはある。ただ俺がこの場に来たのは主様の推薦があったらしいが、ここまで信用されてもいいのかは甚だ疑問であった。

「この世界に傭兵という人たちはいますか?」

「傭兵?あぁおるぞ。国内外の土地を不当に占拠しておる山賊や海賊衆に帝銭を支払う代わりに兵として使うことがある。ただしあの者らは信用できんがな。あんな者どもに銭を払うのであれば、内政に使った方がよほど有意義であろうよ」

 あまり宰相殿は傭兵が好きでは無いらしい。まぁ俺もそこまで良い印象は持っていないけど。

 ただしこの世界にも金で兵を雇うという慣習はあるらしい。ホッとした。これなら、兵農分離も難しいことでは無いし、すんなり理解してもらえるだろう。

 釣り野伏せの時もそうだったが、俺の案が上手くいくとは思っていない。あれだって、結局は現場の人たちの力だと思っているのだ。だから今回もそんな気分で話す。あくまで俺の知っている知識を披露するに過ぎない。万が一採用されたとしても、それを成功させるのは俺では無く目の前にいる宰相殿やその配下の人たちだ。

「兵農分離とは書いて字の如く、兵と農民を分けることです。これまで農民は戦時には兵にもなっていました。兵糧はもちろん、兵として出た家族にも食料を払っているとのことでしたよね」

 あの収支報告を見た限り金は有り余っている。そして過去にはその金を家族に支払った時期もあったらしい。しかし農民からは「銭より食料を」と陳情があったそうだ。

 金があっても結局食料を買うのだ。時期によって売ってある食料の価格も変わる。それよりは一定量食料を貰うほうがありがたいとのことだった。まぁ一理どころか道理だろう。いくら金が有り余っていると言っても、何千、時に何万と動員することもあるようだし、結局戦には金もかかる。しなければいい話だが、お隣の国は何度でもやってくる。

 金は国に回らないし食料はどんどん減っていくという悪循環。だから俺は兵農分離を唱えた。

「あぁ、さきほど説明したとおりじゃ」

「ではこうしましょう。信じられる傭兵を国に抱えるのです」

「信じられる傭兵とな?そんな者がおったら苦労はしておらんわ」

 少し機嫌が悪くなった。傭兵嫌われすぎじゃね?

「ですからこの国の民を兵士として雇うのです。一番良いのは農民の次男以降、ようは家を継げない人たちですね。あとは商人や職人からも希望を募りましょう。そして集まった者らを国の抱える兵士として育てます。禄は米ではなく銭。どうでしょう、従来の傭兵よりも信用出来ると思いませんか?」

 ちょくちょく視界に入っていたが、黙り込んでいるのはそのメリットデメリットを考えているのだと思う。

 メリットはいつでも軍を動かせること。そして兵士とは言え直に国に仕える者だ、戦功をあげれば昇格だってあり得る。それが兵達のモチベーションに繋がるだろう。職業軍人だからその練度も高いはずだ。デメリットは金がかかることだ。それもこれまで以上に。ただしこの国に限ってはあまり深刻に考えなくてもいいだろう。これまでだって無理矢理金を使っても余っていたほどだからな。

「面白い策ではあるな。問題は民達が素直に人をやるか?跡を継げずとも立派な働き手であるぞ」

「そこはほら・・・物で釣るとか?」

 確かにそうだ。これまでも家の青年男性が徴兵されれば米を得れたんだ。新たなやりように納得しない可能性もある。だから物で釣る。

「戦功をあげた者は昇格。その家族にも臨時報酬を出す。食い扶持が減る上に、下手をすれば臨時で収入が出る。これで嫌とは言わないでしょう。問題は逸って早死にしないようにしないといけませんが、それは訓練次第かと」

「ふむ・・・面白いな、その策。成れば安定的な戦力の確保にも繋がる。銭も回り、食料の消費は多少減る。この後、配下の者と話を詰めるとしよう。その時にはぬしも参加せよ。ぬし抜きには纏まらぬわ。纏まれば主に話を通して評定で皆に伝えることになるであろう」

 どうやら通ってしまったらしい。しかも国政素人の俺は、プロに丸投げするつもりだったのに巻き込まれてしまった。

「それとな、今後のぬしの扱いだが珍妙な客ではあるが余所の世界の住人であるということは伏せることになっておる。知っておるのは主と皇子、雄全殿と後宮の者。世話役の中ではあの姉妹とぬしの下男以外は知らぬ。そして呂親子。それくらいかの」

 でもそれって凄く微妙な立場にならない?

「俺って結局どういう扱いされるんですか?」

「他大陸から流れ着いたならず者。主様に才を認められ、わらわに預けられた期待の異国人といったところじゃな」

それって結局・・・

「結局はよそ者という事よ。しばらくは大変であろうな。ぬしが認められるのは、いつになることやらよな」

 のんきに笑っている場合か、宰相殿。俺は正直笑えない。

この兵農分離は織田信長の色が強いですよね。豊臣秀吉のとは目的が違うので。

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