PV
完成したアルバムの中から何曲か選んでシングルを出すことになったので、併せてプロモーションビデオを創ることになった。
最初の一枚は俺たちラディカルプラントのデビュー曲になるのだから、事務所も気合を入れている。
メンバーの内三人が学校に行っている身分なので、思ったようにプロモーション出来ない。それを補ってくれるのがプロモーションビデオ、所謂PVなので力を入れざるを得ない。
心構えをする為に下山さんに色々聞いてみたが、意外に待ち時間が多いらしい。トラを連れて行こう。
レコーディングの間は、余り構ってやれなかった。俺も久しぶりにトラとゆっくり過ごしたい。
そんなわけで現場に来ているのだがPVは女性陣を中心に撮影されるらしく、俺と平嶋くんは最初にCG用のブルーバックの前で一回演奏しただけで休憩になった。
最初は控え室でトラと遊ぼうと思っていたのだが、トラは賑やかなのも好きだから一緒にスタジオにいることにした。仔猫の時と違って今は、落ち着きもあるしね。
トラはマリちゃんが一人で撮影しているのを、興味深そうにみている。CDの音源が大音量で流れているので、自然に体が揺れている。
そんなトラを膝に抱えて撫でていると、本当にリラックスする。癒される。
しかしマリちゃんが休憩に入ってしまうと、トラは俺に続きを催促してくる。仕方がないのでスタジオの機材に近づくと、平嶋くんと美由紀さんも付き合ってくれた。
ボーカル抜きのアレンジを即席で作って演奏すると、トラが近づいてきて足にスリスリしてくる。くすぐったいけど可愛い。
平嶋くんと美由紀さんにもお礼なのだろう、トラは二人にもスリスリしている。こういうのって思わず笑顔になるよね。
三人でニコニコ演奏しているときに、マリちゃんがスタジオに帰ってきた。
「ずるい!私も入る!」
言うなりベースをとって歌いだす。トラはマリちゃんにもスリスリする。
撮影中よりもいい笑顔でマリちゃんが歌う。当然、監督はカメラを回し始めた。
天才猫のトラは大人たちの求めるものが判るのだろう、ドラムを叩く美由紀さんの肩に乗ったり、マリちゃんの脚の間を行ったり来たりしていた。
本当はこの後、屋外で撮影するはずだったのだが、予定を変更してトラと一緒に演奏を続けることになった。
演奏が終わった後、トラを抱き上げて頬ずりした。トラも嬉しそうに頬ずり返してくれた。
久しぶりに一日中トラと遊んだ感じで楽しかった。
明日ももう一日PVの撮影がある。仕事なのに、こんなに楽しくて良いのかしら?
監督を見ると、始めた時より気合が入っているので良いのだろう。メンバーもスタッフも楽しそうなのだ、さすがトラと言わざるを得ない。
結果的に楽しんでいるのが伝わるPVになった。




