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幕間(廻栖野楓の夏休み 後半)

幕間の後半です。

 ボクが部屋へ戻ると雫《しずく》が起きて待っていてくれた。


「遅かったね、楓。どこに行ってたの?」

 雫は片手にスマホを持って、ボクの顔を見ながら訊いてくる。


「あー、友達というか……んー一緒に遊んでた」

 

「ふーん、それって男子?なんか露天風呂で名前呼んでたじゃん」

 ボクが戸惑っている様子をみて、雫は訝《いぶか》しむように目を細める。


「ん、まあ、そう……」


「……好きなの?その人」

 不意の問いかけにボクは思わず顔が熱くなってしまった。そんなボクをみて、雫は眉をひそめる。


「い、いや……そこまでは、まあ小学生の時は仲が良かっただけというか……そんなことは思ってない」

 ボクは顔が熱いまま、両手を顔の前で忙しく振って否定した。けれど(本当は好きなんだと思う。)


「うそつき……」

「まあ、いいや」

 さっきまで険しかった雫の表情は和らぎ、笑顔を浮かべて、ボクの顔を見つめる。


「ねぇ、楓、そしたらさ。せっかく同じ部屋なんだし一緒に寝よ」

「ダメ?」


「雫が良ければ、ボクは良いけど」


「ありがと、じゃあ、もう寝ようよ。私、楓を待っていたら眠くなっちゃって」

 雫はあくびをして、立ち上がると洗面台に歩いていった。


 「ほら、楓も歯を磨こうよ」


 そして、ボクと雫は寝る前に歯を磨いて、少し狭いけど同じベッドに一緒に入った。


「今日の露天風呂は良かったね」

 雫は布団に入るとボクの方に身を寄せて、ボクの顔を見つめながら、ニコニコしていた。


「うん、やっばり家のお風呂とは違うよな」


 「それにしても……楓の胸は大きいなー、私の腕にあったちゃいそ」

 そんなふざけたことを雫は言いながら、ボクの胸を指でつんつんする。


 「んっ!?」

 ボクはいきなり触れられて、ビクッと肩を竦ませて、また顔が熱くなる。


 「楓の反応おもしろ、ふふ」

 

 「…………」

 しばらく、雫は無言のまま、ボクの顔を真剣な表情で見つめている。


 「ねぇ、楓」


 ——「キスしていい?」


 「え!?」


 「え、いや、それは男女でやるものというか、ボクと雫は女同士というか……」


 「はは、冗談だよ」


 「楓が可愛いからからかっちゃった」

 雫は可愛らしく、ぺろりと小さく舌を出してみせる。


 「あー楽しかった。私は寝るね。おやすみ、楓」

 そういうと、雫は身を捩《よじ》って、ボクに背を向けて布団を頭まで被った。


 ボクは雫の突飛な発言と行動にドキドキしたままだった。

 そういえば雫は中学生の時から、たまにボクをびっくりさせるようなことをよくしていたな。

 

 「んー……」

 と小さな声を漏らしながら、雫はボクの方へと身を捩って寝返りを打つと布団から頭を出す。

 ボクは思わず、そこから吐息が漏れる雫の口元を見つめてしまった。


 すると雫の唇が小さく開き、言葉が零《こぼ》れる。

 ——「……好き」


 雫は好きな子とかいるのかな?いい夢を見てればいいなとボクは思った。


 *


 合宿が終わって1週間後、部活動が休みの日に雫とプールへ行くことになった。

 

 その前に雫から水着を買おうと誘われたので、今日は近くのショッピングモールへと2人で出かけた。


 「雫はどんな水着にするん?」

 ボクは店内で水着を手に持っては戻すを繰り返す雫に尋ねる。

 

 「んー、楓はどんなのを私に着てほしい?」逆に訊《き》かれた。

 「雫はやっぱりビキニじゃない。ほらこんな白のやつとか似合いそう。前にリボンとかもついてるしかわいいかも」

 雫はボクが手に取った水着を持って、首を傾《かし》げながら考えているようだった。


 「楓が選んでくれたし。せっかくだし試着してみようかな」


 そういって雫はフィッティングルームへ入っていく。雫を待つ間、ボクも水着を手に取ってみる。

 どれもボクが合わせるには少し小さい気がした。すると店員さんがボクのところに来てくれておすすめを教えてくれた。


 「お客様には、こちらのコーナーがおすすめですね」

 そこは、いわゆる大きい人向けのコーナーだった。ボクは別のコーナーにあった可愛いのとかがよかったのにな。


 ボクが一人、水着選びで悩んでいると、雫がフィッティングルームのカーテンを少し開けて手招きしている。


 「じゃーん、こんな感じ」

 雫は白のビキニタイプの水着で真ん中には、水玉模様の青色のリボンがあしらわれていた。

 

 「雫、すごく似合っているよ。かわいいな」

 ボクが素直に褒めると、雫は少し顔を赤くして、嬉しそうだった。

 

 「ふふ、じゃあ、これにしちゃおう」


 「ところで、ボクも買いたいんだけどいい?」


 「いいよ、当たり前じゃん。私が選んであげるよ」


 「うん、ありがとう。ボクのはこっちのコーナーらしいんだ」

 そうしてボクと雫は大きい人向けのコーナーに向かう。


 雫は自分以上に一所懸命にボクの水着を探してくれた。取ってはボクに合わせて、また戻してを繰り返す。

 「うん、これが一番かな」

 「楓は胸が大きいから、フリル付きのオフショルダーにしておけば、目立たないからいいんじゃないかな。それに楓に似合いそう」

 それは少し大人っぽいワインレッドの水着でトップスにはボリュームのあるフリルがあしらわれている。


 「うん、いいかも。ちょっと試着してくる」

 ボクはフィッティングルームに入り、ズババババっと普段着を脱いで、水着を試着した。鏡を見ると、確かに前からだとボクの胸の大きさがわかりづらいかも、でも横向いたらバレバレだな。でも自分でも似合ってるかもと思えてうれしかった。


 「じゃーん、こんな感じ」

 ボクはカーテンを開けると、雫は「おぉ、似合ってる」と言ってくれた。

 

 そして、ボクと雫はお互いで選んだ水着を買った後、途中の喫茶店で甘いもの食べて帰った。


 *


 そして、当日、ボクと雫はプールに到着すると、更衣室で昨日買った水着に着替える。

 お互いちょっと見せ合いっこした後、プールサイドに出ると多くの人が楽しそうに泳ぎ、賑わっていた。きっと、そろそろ海はクラゲが多くなるからプールに行く人の方が多いのかもしれないな。

 ボクと雫は長い大きな滑り台に乗ったり、バナナボートで遊んだりして、めっちゃ楽しんだ。そしてプールサイドにあるビーチベッドで休んでいると、見知らぬ男性から声をかけられる。


 「ねぇ、お姉さんたち、俺らと一緒に遊ばない?」


 こういう時はいつもボクがその男どもの前に立ちはだかり、鬼気迫る形相でそいつらを睨みつけると諦めてくれる。というか逃げる?

 まあ、仮に強引に来られても、護身術はお互い身につけているから、問題ない。

 

 「ところでさ、楓、宿題ちゃんとやったの?」

 ボクがビーチベッドに戻ると雫が聞きたくない言葉を投げかける。


 「ううん、まったく」


 「え?もう夏休み終わるよ」


 「雫に教えてもらおうと思ってたんだ。だってボクみても全然わかんないし」


 「はぁ……」

 「仕方ないなー、明日から夏休みが終わるまで、みっちり勉強会だよ!」

 雫は大きな溜息をついて、またかよって感じの呆れた果てた表情で。——ボクに『死の宣告』を行った。


 「うー……」

 こうして、ボクの楽しい夏休みは早々に終わりを告げた。

 


次回は文化祭編に入ります。

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