仲直り大作戦 Vol.5
あれから1週間が経ち、そろそろ期末テストも近づいてくる6月下旬、僕は敷戸から戸田と仲違いになった理由を訊く方法を思案していた。
「うーん、直接聞く以外何も思い浮かばない……」
最初、僕が「タピオカガールズ」のライブを観に行き、敷戸と話をすればいいと考えていた。しかし敷戸のバンド「タピオカガールズ」のライブは8月までないことを本人に聞かされた。理由はまあその通りなんだが、違う高校とはいえ、皆等しく期末テストと言うものがあるからだ。
「ライブを観に行く手段は使えないな」
僕が机に肩肘をついて考え事をしていると、戸田が声をかけてきた。
「友近~、たまには部活じゃなくて、俺とゲーセン行かね?」
なんだ、藪から棒にいきなりゲーセンだと。
「戸田よ何言ってんだ、学生は勉強が本分だろう。ゲーセンなど行く余裕はない。ましてや津留高校は進学校なんだからバレたら面倒だ。」
僕は戸田の提案を断ろうとしたが、ふとアイデアが浮かんだ。数瞬考えを巡らせ、敷戸から聞き出す方法を思いついた。
「ゲーセンかそれはありだな」
「なにが?結局行けんのか?」
「仕方ないな。いいよ、帰りに行こう」
*
帰る途中ふたりでゲームセンターに向かった。僕の家の近くにもゲームセンターはあるのだが、学校から比較的近いため、僕らは敢えて少し遠くのゲームセンターを選択した。
中に入ると賑やかな音楽が流れていて、僕たちの他に他校の学生や大学生と思しき人、小さな子供を連れた母親などが各々楽しんでいた。
戸田は右手に並ぶクレーンゲームのコーナーへ向かっていった。何かお目当ての品があるようだ。
「お、あったあった、俺さこれ取りたいんだよな」
そこは某人気アニメのフィギュアが置いてあるところだった。
戸田はお金を入れ早速ボタンを操作した。一度の操作で取れるものはないので何度か挑戦しないといけない。
僕もYoutubeで少し見たことがあって橋渡しというものだ。平行に渡された2本以上のバーの上に景品が載せられており、その隙間に落として獲得する。
戸田も何度か同じ景品を挑戦したことがあるのかもしれない。少しずつ商品を斜めにして、間に落とそうとしていた。
僕は見ててもつまらないので戸田に程々になと声をかけて別の場所に移動した。
すると可愛らしいキーホルダーがあるクレーンゲームが目に留まる。そのキーホルダーは猫のぬいぐるみで鞄につけられそうなサイズだった。
僕は何度か挑戦して、獲得できた。ただ財布の中身を見るとそれなりに使ってしまっていたので、これはお小遣いがいくらあっても足りないなと身を以て納得した。
「友近ぁ~、全然取れなかったよぉ~」
戸田の元へ戻ると、結局取れなかったみたいで、半泣きで肩を落としていた。だから程々になって言ったのに。
僕が手に入れた猫のぬいぐるみのキーホルダーは早瀬にあげようかと思った。でも早瀬はこんな可愛いものより厳つい猫の方が好きかもしれない。とりあえず僕が戦利品として持っておくことにした。
夜、部屋でボーとしながらクレーンゲームをプレイして僕は思った。当然お金を使って手に入れたわけだが、僕はひょっとしてクレーンゲームが得意かもしれないと悟った。
(敷戸のクレーンゲームのスキルはわからないが、敷戸をゲーセンに誘って勝負してみるか。)
——ただ早瀬も一緒に連れていかないと、きっと拗ねるかもしれないので3人だな。
*
翌日、早瀬を教室の外に呼んで、僕の作戦を伝えた。
「ゲーセンとか行ったことないわ」
「そりゃそうだよな」
「それで、僕は敷戸を誘ってゲーセンに行こうと思うんだけど、早瀬はどうする?」
「それは、もちのもち、こうくんについて行くわ」
——早瀬、変なとこ真似するとクール美人が崩れるぞ……。
*
数日後、僕は敷戸があの猫のキーホルダーが好きであることを早瀬から聞いた。今まで気にも留めていなかったが、確かにその猫キーホルダーらしきものが敷戸の鞄につけられていた。
さらに好都合だったのが、僕が取ったキーホルダーはその猫のぬいぐるみの新作だったそうだ。となると敷戸はこのことを知らない可能性が高いのでゲーセンに誘う理由もできた。
「敷戸、今いい」
「お、今度は何かね?ともちん、はやっちも一緒か」
「どうしたん?」
「実はな、早瀬から聞いたんだが、敷戸ってこれ好きなのか?」
「あ、それ『ねこすけ丸』じゃん!ちょー好き!しかもそれ見たことないやつ」
「この前ゲーセンに行ったら、新作があってな。取ってきたんだ」
「それで今日も早瀬と行ってみようと思うんだが、敷戸もしよかったら、放課後ゲーセンに行かないか?」
「えー、行く!もちのもち!」
何だかあっさりと約束が取り付けられてほっとしたものの、最初からこうすればよかったんじゃないかという後悔が頭をもたげた。
*
放課後、僕ら3人は学校から少し遠くにあるゲームセンターへ向かった。
そして、目的のもの『ねこすけ丸』の新作があるクレーンゲームの台に来た。
「敷戸、ここで僕からの提案なんだか、せっかくだし勝負してみないか?」
「ん?勝負?どんな?」
「この『ねこすけ丸』をどれだけ少ない回数でとれるかの勝負だ」
「別にいいけど、私割と得意だよこれ」
敷戸は得意げに話しをしているが、それは想定内だ。僕もこの勝負に向けて、あの日戸田とゲーセンに行った後、今日まで毎日練習をしていたからな。
恐らく良い勝負になると思う。
「じゃあ、もし敷戸が勝ったらさ、僕が取った分も含めてあげよう」
「そして僕が勝った場合は、戸田となんでそんなに仲が悪いのか教えてもらうでどうだ?」
「えー、それずるくない?」
「だったらさー、私が勝ったらさ、ともちんがはやっちのことどう思っているか教えてよ」
「な!?」
「……そう来たか……」
僕は早瀬に視線を向けると、早瀬は目を輝かせながら僕の顔を見つめていた。
これは受けざるを得ない状況だな。
「わかった」
こうして僕にとって負けるわけにはいかない勝負がスタートした。




