仲直り大作戦 Vol.1
戸田と敷戸を仲直りさせるため、友近と早瀬が奮闘します。
——ゴールデンウィーク明けの中間テスト。
高校生になって初めてのテストだったが、学年順位は18位とまずまずのスタートを切れた気がする。
次は期末なのだが、僕にはその前に大きな課題が残っている。
——戸田と敷戸を仲直りさせること。
勉強は自分の努力次第でどうにでもなるのだが、人の仲を取り持つことは努力で、どうすることも出来ない。
僕は聞き方なんてストレートに聞くことしか手段を持ち得てはない。はっきり言って苦手だ。
本当は期末に向け勉強をやりたいのだが、この課題をクリア出来なかった時に何が起きるのか分からない恐怖の方が強く、僕は陰鬱な気持ちを抱えたまま——この難題に立ち向かおうとしている。
※
「うーん、どうやって聞き出した方がいいかな~」
「私はストレートに聞いてしまった方がいいと思うわ」
頭を抱えて考えている僕に対して、早瀬は紅茶を口に含みながら余裕を見せる。
——今日は休日。僕と早瀬は「仲直り大作戦」と称して、今、下郡にあるJoyfullで作戦会議をしている。
ちなみにJoyfullは大分発のファミレスで、比較的安く美味しい料理が食べられるのでファミリー客だけでなく、学生も多い。僕らはその一角に腰を据えて話をしている。
「ストレートに聞いて答えてくれればいいけどさ、あの感じじゃ、多分敷戸も早瀬に言わないと思うよ」
僕は先日戸田に聞こうとしたのだが、「今忙しいからまた今度」と適当にあしらわれてしまい、その場で聞き出すことが出来なかった。
敷戸も同じとは限らないが、ここはちゃんと作戦を考えた方が良いだろう。
「私は単純に学校だから言いたくないのかもしれないと思うのだけれど」
「例えば帰りに静かな喫茶店とかに寄って、美味しいアイスクリームを頬張れば、美味しさに感動してうっかり話してしまうかもしれないわ」
——早瀬、何を言ってるんだ。そんな訳ないだろう。
突飛な発言をたまにする早瀬へ僕は溜息をつく。
「まあ、確かに学校じゃ、聞いてるやつも多いし、落ち着いた場所の方が話しやすいのかもな~」
「そうか、うーん、話しやすいところか……」僕は顎に手を当てる。
「そうだな、だったら戸田の家とかどうかな?アイツ家が中華屋だから、ご飯食べるついでに話を聞くなんて出来そうだし。それに友達権限利用して部屋でなら僕にも話しやすいと思うんだよな」
「そうね。いいかも。私はこうくんに付き添っても?」
「いや、それは、ごめん。今回はなしだ」
「どう考えても男同士の方がいいでしょ」
「うー……そう、残念」早瀬は頬を膨らませる。
——早瀬よ、気持ちは有難いが、少し真面目にやって欲しいぞ。
「私はどうしようかしら……」早瀬は人差し指を頬に当てて首を傾げた。
「うーん、敷戸はバンドやってるだよな?」
「そう、バンドでライブとかもやってるらしいわ」
「正解になるかわかんないけど、それがいいんじゃないか」
「?」
「早瀬は敷戸のバンドのライブを観に行くんだ」
「それでライブ終わりに出待ちして、少し時間貰えるか聞いてみて欲しい」
「え?それはハードル高いわ……」
「出待ちして、出てきた敷戸に声を掛けて誘うだけだ。早瀬なら大丈夫だよ。僕からのお願いだ」
僕は頭を下げた。根拠はないが、早瀬は問題なくやってのけてくれそうな気がする。
「うー、わかったわ……こうくんの頼みなら……」
早瀬は少し肩を竦め、自信なさげに眉を寄せたが、それが僕の頼みだと思いなおし、右手で拳を作り「ふんす」と可愛らしく意気込んで見せた。
「もし、上手くいったら、私こうくんからご褒美が欲しいわ」
「それでいいなら、やるわ」
——何のご褒美を求めらるか分からない恐怖を若干感じたが、ここは何とか早瀬にお願いするしかない。
「……わかった。ご褒美はお手柔らかにお願いします」
——こうして、僕ら二人はそれぞれ戸田、敷戸からまずは事情を聞くため、作戦をスタートさせた。
次回は、戸田と友近編です。




