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第八話 書庫階段

 小さな図書室には誰もおらず、妙に静かだった。カウンターで入館記録を書くも、司書さんすらいない。

 蝉の声だけがやけにうるさく響く。

 エアコンのない図書室は窓が開けられていても蒸し暑い。窓辺でわずかにカーテンが揺れた。俺は早足で演劇の本を探す。

「うーん……大して置いてないな」

 演劇部があるわけでもない高校にそんな専門書はないようだった。入口の方へ戻ると、ふと俺の視界に案内看板が入る。

『B1階 書庫』

「書庫、か。演劇の本、そっちならあんのかな……」

 俺はくるりと振り向き、書庫へ下る階段を探した。

 書庫階段と書かれた扉を開ける。むわりと熱気が肌を焼く。

 俺は一度足を止めた。そしてゆっくりと踏み出す。

 一段。

 手すりを握る手が少し冷たい。

 一段。

 ジジ、と蛍光灯の音がする。

 一段。

 書庫は電気がついておらず、中がよく見えない。非常灯の灯りだけがわずかに室内を照らしている。

 ……一段。

 なんだか変な匂いがする。持久走を走り終えた時のような、鉄のサプリを飲む時のような。

 …………一段。

 暗闇の中に何かが落ちている。人の形。同じ制服。見覚えのある、細い眼鏡。

 ぴくりとも動かず、そこに横たわっているのは――部長だった。

 その頭の周りには血が広がっている。

「………………うわああああああああっ!!」

 俺の絶叫が小さな書庫に響き渡った。

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