第四十話 プレゼント
全ては俺を壊し、耐えられるか見るためだった。
そんなことのために、部長と岩センが犠牲になった。
胸の底から怒りが燃え上がる。視界が滲んで、ぼろぼろと涙が目から溢れていった。
「う……うあああああっ……!!」
俺はスイの胸ぐらを掴み、その顔を睨みつけた。彼女は目元を緩ませて笑う。
「うん……いいね。つらいよね」
「うるさい……!」
スイは俺に掴まれたまま、それでも嬉しそうにカメラへ手を伸ばしてパシャリと俺の写真を撮る。
「おお……これは今までで一番いい表情かも」
「やめろ……!」
「すぐに現像しなきゃ」
「――いい加減にしろよ!!」
俺は今までで一番大きい声で叫んだ。
「お前はおかしい……! 人を殺しておいてそんなにへらへらして……大好きだって言うくせに俺のことを絶望させようとして!
人を壊して試すなんて、そんなこと許されないんだよ……!!」
「…………。」
スイはぽかんと口を開けて固まる。その瞳に夕焼けが映っていた。
「……おかしい、かな。だって……へこたれても立ち上がるハルトくんが、どんな物語よりも眩しくて……もっと見たかったの」
「そんなのは愛じゃない! ただのワガママだ……!」
「――」
彼女は初めて、わずかに顔をしかめた。
「そ……そうっすよ! 自分の罪を認めて、償ってくださいっす!」
千夏も加勢する。スイは横目で千夏を見て、唇を尖らせた。
「……でも、千夏ちゃんも自分のために写真のこと黙ってたり、岩井先生の死体を動かしたりしたじゃん。ハルトくんのこと独り占めしたかったんでしょ?」
「う……そ、それは……!」
「お前の罪とは重さが違うだろ……! それに……千夏は俺を裏切ったりしない……! 少なくとも、お前とは違うんだ!」
その言葉に、スイは口角を上げて嬉しそうに笑った。
「……どうかな? 千夏ちゃんだって自分のために動いてたよね。人ってそういうものだよ。だからいつか、千夏ちゃんもいなくなっちゃうかも」
「は…………」
足元が崩れていくようだった。眩暈がして、スイを掴んでいた手から力が抜ける。
「ふざけ、んなよ……そんなこと、俺は……。」
声に力が入らない。夕焼けに照らされながら、彼女は俺に笑いかけた。
「ハルトくん……私は、もうそばにはいられないけど。何があっても、前を向いて生きていってね」
その瞳は少しだけ寂しそうに揺れていた。




