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第三十八話 真相

 燃えるような夕焼けが三人を赤く染めている。

「真犯人は先週、部長が岩センの息子をいじめている捏造写真を作って書庫のファイルに入れた。そして今朝岩センがその写真を発見し、部長を殺害。証拠である写真を持ち去った。」

 千夏が痛々しそうに目を伏せる。

「そうっすね……」

「そして、それが発見される前に真犯人は動いたんだ。

 一緒にいた千夏がお腹が痛いとお手洗いに行った隙に、廊下で岩センを殺害。一見生きているように見えるように偽装して空き教室に戻ったんだ。」

 スイは俯いたまま何も言わない。

「…………」

「それと、真犯人は岩センの死体から部長によるいじめの捏造写真を奪っている。これが発見されると、カメラに詳しい自分に疑いが向く可能性があるからだ。

 スイ……お前は、その写真を持ってるんじゃないのか?」

 俺はスイに目を向けた。

「真犯人は……スイ、お前なんだな……?」

「久遠センパイ……そんな……。」

 俺は自分で言いながらあまり実感がなかった。幼い頃から苦楽を共にしてきた幼馴染が……父親を殺した殺人犯だなんて。今日の悲劇の元凶だなんて……到底思えなかった。それでも、証拠が彼女を指し示している。

 スイは全く否定しない。ただ、ずっと静かに話を聞いている。

 そして彼女はゆっくりと顔を上げて、ふわりと柔らかく笑った。

「……うん、そこまでたどり着いたんだね」

 そして首を傾げる。

「……どう?」

「どう……って、お前……」

 俺は絶句してうまく言葉が出てこない。彼女は悪びれもせず唇に手を当てる。

「あれ……なんか意外とショックじゃない感じ?」

「いや……そんなわけ、ないだろ……。」

「……どういうことっすか、久遠センパイ……?」

 俺は眉を下げる。妙に落ち着いた脳内と、寒気がする体のギャップを感じる。隣で千夏も固唾を飲んで見守っている。とにかく、スイの話を聞かなければ。

「どうして……どうして、こんなことしたんだよ。スイ……俺はお前を、信じてたのに……」

「……うん。信じてくれてたからだよ」

「え……?」

 脚にうまく力が入らず、崩れ落ちそうなのを堪える。彼女は穏やかな笑顔で言った。

「……幼馴染が実の父親を殺して、身近な人を失えば……心が折れるでしょ? どうしようもなく苦しいよね?」

「お前は……俺を、苦しめたかったのか? 俺のことが嫌いだったのかよ……っ?」

 彼女の真っ赤な輪郭が夕焼けの中に滲んだ。

「……ううん? ハルトくんのこと、大好きだよ。だから……どれだけ壊しても立ち上がる姿を、ずっと見ていたかったの」

「は…………?」

 思考が止まる。意味が、分からない。唇がどうしようもなく震えた。

「なん、だよ……どういうことだよっ! ふざけんな……!」

「そ、そうっすよ……! 命をなんだと思って……!」

 胸の奥が冷たくなる感覚。目の前の幼馴染が全く理解できない。

 彼女は俺の言葉に答えず、上着の内ポケットから小さなフォトアルバムを大切そうに取り出した。初めて見る、年季の入ったアルバムだ。

 そこに収められていた写真に、俺は固まった。

 ……幼稚園のころ一緒に撮った写真。小学生の笑顔の俺。

 中学生の、葬儀の日の俺。高校のバイト帰りの俺。

 俺。

 俺。

 ……俺。

 全て、俺の写真だった。

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