第二十四話 死体と衣装
死体を見るのはこれで二回目だが、慣れるようなものではない。俺は手を震わせながら岩センの死体を覗き込んだ。
白衣の中で心臓をナイフで刺されている。ナイフの上から白衣を着ているような、少し奇妙な格好だ。これはどういうことだろう。
岩センは何故か大きな白衣を着ている。小柄な体格に合わないぶかぶかの白衣。ボタンで前が閉じられていた。
よく見ると白衣の背中側の布に長い切れ込みが入っている。これは何だろう?切れ込みを入れられるようなものはあっただろうか。
ナイフが抜かれていないからか、流れている血はそう多くはないようだ。でも、ナイフなんてどこにあったんだ?
その時、スイが背後から遠慮がちに声をかけてきた。
「……このナイフと白衣、空き教室に置いてあった小道具と衣装なんだ」
「小道具と、衣装……?」
「そう。劇の凶器と、被害者役の真田先輩の衣装」
俺は劇の詳しい内容を初めて知った。ナイフ、白衣、被害者……嫌な一致に背筋が冷える。
「……悪趣味だね。劇の内容に合わせたのかな?」
スイが顔をしかめてそう呟いた。
「岩セン……。」
俺は少しためらいながらも、感情のままにそっと彼の手を取った。いつも頭を撫でたり背中を叩いてくれた手。ごつごつした手は冷たくて、もう二度と動かないことが分かった。
「…………行かないで、ほしかったな」
ぽたりと涙がこぼれた。もう枯れたと思ったのに。
蝉の声がずっと響いている。これからは毎年夏になるたびに、今年のことを思い出すだろう。
千夏は屋上の入口でこちらを見つめている。目が合うとすぐに逸らされた。その瞳は揺れて、何かを伝えたがっているみたいだった。




