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第二十一話 本当の凶器

 俺は写真が気になっていた。部長と岩センの息子のクラスの写真が抜き取られていたことだ。彼と部長にいったい何があったのだろう?

「写真が抜き取られたのも……犯人が岩センだとしたら、息子さんのことで何か事情があったとしても頷けるな。」

 スイも頷く。

「……まだ確実なことは分からないけど、何か思い入れがあるらしいことは確かだね」

「凶器についてはどうだ?書庫にそれらしいものはなかったが……」

「うーん……ポケットサイズの何かで殴って、まだ持ってるとか」

「岩井センセー、そんなに重くて固いもの何か持ってましたっけ?」

「ポケットサイズのものを持ち込んだとしたら……。いや、待てよ?」

 俺は現場の状況を思い出す。そして、ある違和感に気づいた。

「……そういえばさ……段ボールが倒れてたのって、よく考えたらおかしくないか?」

「え? 段ボール、っすか?」

 千夏とスイが驚いたようにこちらを見る。俺は息巻いて続けた。

「ああ。犯人が部長を転落死に見せかけるだけなら、階段の下に死体を移動させるだけで良い。段ボールを崩す必要なんてないんだ。それに、あの段ボールが不自然な位置にあったせいで、俺たちは転落死じゃないって気付いただろ?」

「……たしかに」

 スイが目をぱちぱちと瞬かせる。

「でも、段ボールは崩されていた。犯人には、何か狙いがあったんじゃないか?」

「狙いって……なんなんすか?」

 千夏が俺に聞いてくる。スイが顎に手を当てた。

「……段ボールを崩すことで起こったことって……中身の本が飛び出て、部長の髪の上に落ちてたよね。べったり血がついて、もう読めないかも……」

「……そうか! 血のついた凶器を隠すためじゃないか!?」

「え……?血のついた、凶器?」

 スイがぽかんと口を開ける。

「――もしかしたら本が凶器だったんじゃないか!?

 犯人は殺害する時、手近にあった本で殴ったんだ。そしてそれを隠すために、段ボールが崩れたように見せかけたんだよ!」

「えええええっ……!?あの本が、凶器だったんすかぁ!?」

 千夏が目をまん丸にして立ち上がる。その拍子に彼女の椅子が倒れて音を立てた。

「ああ……それに、血塗れの本の中に分厚いものもあったはずだ。もしあれが凶器なら、角が曲がっていたり血のつき方が不自然だったりするかもしれない。

 そうだとしたら、全ての辻褄が合うぞ……!」

「あ……それなら、私現場の写真を撮ってあるよ」

 スイがカメラを操作して現場の写真を見せてくれる。拡大すると、血でかなり濡れている本の一つに角が曲がっているものがあった。千夏が顔を歪める。

「やっぱりこれなのかもしれないっすね……。」

 スイも憂い気に目を伏せた。

「……うん。岩井先生に、ことの顛末を聞きに行こう」

 俺たちは立ち上がり、二階へ向かう。しかし俺の足取りは重く、俺たちの間にはどんよりとした空気が立ち込めていた。

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