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第二十話 身近な容疑者

「じゃあ、スイは本当に図書室に行ってないんだな?お前は、犯人じゃないんだよな……?」

 俺は縋るように問う。スイはこくこくと頷いた。

「うん……信じてほしい」

 しかし、千夏の表情は晴れない。

「でも……。あたしたちの中に犯人がいるってことは、変わらないっす。じゃあ、誰が……?」

 その言葉に空気が張り詰める。本当にこの中に犯人なんているのだろうか?俺は喉が締まるのを感じた。

「……犯人に繋がる手がかりは何かあったか?」

「……私が気になってたのは、おっきな台車。あれ、血の跡が全然なかったから……犯人は死体の移動に使ってないと思う。」

 俺はその意見に納得し低い声で同意した。

「……確かにそうだ。台車につくだろうたくさんの血を拭き取れるようなものもないし……。他に運ぶのに使えそうな道具はなかったから……犯人は、部長を抱えて移動したのか?」

「うーん……他の方法はなさそうかな?」

 抱える以外の方法で人を運ぶためには何か道具が必要なはずだ。書庫にそんなものは台車くらいしかなかった。

「で、でも……もし抱えて移動したとして、死体から流れる血はどうするんすか?」

 俺は考える。部長から流れていた血の量はそこまで多くなかった。

「ハンカチか何かで押さえたんじゃないか? あの傷ならそれで大丈夫だと思う。」

「……他に拭くものもないしね。じゃあ、犯人は血のついたハンカチを持ってるかも」

 俺はゆっくりと目を伏せた。

「犯人は、部長を抱えられるくらい力が強い人物だってことになるんじゃないか……?」

 俺は俯いて言った。スイが憂いを帯びた表情で口を開く。

「……男の人ならできるってことだよね。ハルトくんの可能性も、ある……?」

「え……!? お、俺は違うぞ!」

 俺は慌てて否定した。

「……そうだよね。家に行った時、事前に外出してたようには見えなかったし……。」

 千夏が慌てて続ける。

「じ、実は真田パイセンの体重が軽かったとか……?」

「いや、それはない。体格は普通だったし、身長も高いほうだ。部長が軽いとは思えない……。」

 スイが唇に指を当てる。

「……何かで引きずって運んだとか、複数人で運んだとかは?」

「引きずるための道具がないし、書庫はそんなに広くないだろ? 複数人で運ぶのは難しいと考えていいと思う。」

 辿り着いてしまった結論に、千夏の手が震える。

「じゃあ……岩井センセーが怪しいってことっすか……!?」

「……確かに、全然姿が見えないよね。どこいったんだろ……」

「それに、朝から様子がおかしかったよな。息子さんの話で動揺していたし……。」

 俺は唇を噛む。スイが犯人でないと分かって安心できたのに、次は岩センを疑わないといけないなんて。

「……でも、それなら納得いくことがある。入館記録だよ。岩センは教員だから、書かなくていいんだ……。」

「あ……確かにそうだね。」

 重い空気が満ちる。岩セン、嘘だよな?どうしてそんなことしたんだよ……?

 その時、千夏が声を上げた。

「ま、待ってくださいっす! まだ、写真のことが分かってないっすよね! 凶器のこととか!」

 確かにそうだ。無くなった写真に消えた凶器。まだ謎は残っている。

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