第十九話 彼の真実
「……考えたくないっすけど……もし犯人が久遠センパイだとしたら、こういうことっすよね。」
千夏が暗い声で話し始めた。
「久遠センパイは早朝に真田パイセンと書庫で会って、何か話して……真田パイセンを殺してしまった。そんで、台車か何かで死体を運んで殺人の隠蔽をした……。」
スイは力なく首を振る。
「……違う。私は図書室に行ってない……。」
その言葉に、俺は反論する。
「でも……でも、じゃあなんで入館記録にお前の名前があったんだよ!」
「それは……」
スイは言いづらそうに視線を逸らした。この期に及んで何を隠すことがあるんだ?
「なあ、頼むよ。犯人じゃないなら、隠してることを教えてくれ。俺だって、お前を疑いたくないんだ……」
「ハルトくん……。」
スイは眉を下げる。そして、ぽつぽつと話し始めた。
「――入館記録に私の名前を書いたのは、真田先輩だと思う。」
「えっ……!? 部長が!?」
俺は驚いてがたりと椅子を鳴らした。部長がスイの名前を?一体どうして?
「どういうことっすか……!?」
「……私、真田先輩に図書室に呼び出されてたから。」
「呼び出されてた……?」
俺は首をひねる。あの、スイに意地悪ばかりする部長が?その時、千夏が声をあげる。
「……あっ……! それって、もしかして……!」
千夏の顔が上気する。スイは俯きながら言った。
「……うん。告白、だと思う」
「はっ……? 告白……!?」
俺は面食らう。誰が?部長が、スイに?
「で、でも……部長はスイを嫌ってたんだろ?なのに、なんで……どういうことだ?」
「……センパイ、分かってないですね……。あたしは前からそんな気がしてたっす」
千夏の視線が冷たい。俺は何か……良くないことを言ったのか?
「……私のこと好きだからああやって厳しくしてきたんじゃないかな。
でも、私は告白受ける気なくて……だから、図書室には行ってないんだ。なのに、名前が書かれてた。」
俺はスイの言う意味を考える。それはつまり……。
「部長は、スイがきっと来てくれるって信じて……入館記録に事前に名前を書いといたってことか?」
千夏が悲しげに続ける。
「来るって思いたかったのかもしれないっすね……願かけみたいな。」
「あの記録に、そんな意味があったのか……。」
俺は圧倒される。あの部長が、そんなことをするなんて。
しかし、それならスイは本当に図書館に行っていないのか?まだスイの偽装の可能性がある。アリバイが成立したわけじゃないが……真犯人は誰なんだ?




