第十八話 信じたくない
俺たちは図書室に戻り、改めて話し合いをすることにした。
「その……事件の手がかりは掴めたんすか?」
千夏が恐る恐る問いかける。その言葉にスイは何も答えなかった。
「……ああ。まとめて話すよ。」
俺と千夏はスイの座った机のそばに椅子を持ってきて隣に座った。そこには一人分の椅子が足りない。
俺は目を伏せて、口を開いた。
「さて――」
二人は身を固くして俺を見つめている。
「部長が殺された時、書庫で何が起こったのか。それは概ねわかった。」
「わかったんすか……!?」
「まず、犯人と部長は書庫で何らかのやり取りをした。そして、部長が後ろを向いた隙に犯人が部長を空の可動式棚に押し込んだ可能性がある。そして、凶器で後頭部を殴って殺したんだと思う。」
スイは頷いた。
「その後、犯人は殺人を隠蔽しようとして、転落死に見せかける工作を始めたんだ。」
スイが俯いて続ける。
「……犯人は死体を階段下に移動させて、段ボールを崩して本をばら撒いた。」
「……ああ。部長の髪の上に本が重なっていたことから、その順番で正しいはずだ。
そして、犯人はおそらくファイルから写真を数枚抜き取って、書庫を出ていった。」
千夏は眉を下げて話を聞いている。
「ひ、ひぇえ……そんなことがあったんすね……」
そして、他にも分かったことがある。俺は喉から絞り出すように言葉を続けた。
「図書室の、入館記録には……部長、そしてスイの名前が書かれていた。」
千夏がその言葉にばっと顔を上げてスイを見つめる。
「へっ……!? 久遠センパイが……!?」
「…………。」
スイは相変わらず何も言わない。
「……でも! スイが犯人なわけない。そうだろ?」
俺はわざと明るい口調で言った。俺自身が一番そう信じたかった。
彼女以外の犯人が必ずいるはずだ。俺は前のめりになって続けた。
「つまり……スイ以外の犯人、外部犯がいるんだよ! 誰かがこの図書館棟に入り込んで、それで……!」
しかし、二人の表情は曇っていく。スイが言いづらそうに声をあげた。
「……それは考えづらいと思う……。」
「な……! なんでだよ!」
思わず食ってかかる俺に、彼女はわずかに首をすくめる。それでも、俺を見つめ返して呟くように言った。
「……だって、図書館棟に外から来る人なんていないもん。図書館棟の門は鍵で閉められてて、夏休みに出入りするのは番号を知ってる文芸部員と岩センだけ……。
窓は閉まってるし、入り口には監視カメラがあるから侵入者がいれば捕まるはず。」
千夏も、外に視線をやりながら悲しげに言った。
「……はい。それに、司書さんも夏休みはこの図書館棟には来ないっす。
そうなると、犯人はここに出入りする……あたしたちの中の、誰かっすよね……。」
その言葉に俺は愕然とした。
「……くそ、くそっ!」
拳を強く握りしめる。
「そんなわけない……スイが犯人なわけないだろ……!?」




