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第二部スタートです。
毎日21時頃投稿予定です。
よろしくお願いいたします。
朝の眩しい光を感じて瞼を開ける。
ふかふかのベッドの感触に、一瞬自分がどこにいるのかわからなくなった。
ふと窓辺に目をやると、リンダがカーテンを開けたところだった。
「おはようございます。奥様。」
そう言ってリンダは私の為に水を張った盥を持ってきてくれる。
顔を洗うと、おひさまの匂いのするタオルを渡してくれた。
「おはようございます、リンダさん。毎朝ありがとうございます。」
「使用人には敬語はいりませんよ。それに、敬称は付けずにリンダとお呼びください。」
「ごめんなさい。…リンダ。」
こんな会話をこの公爵邸へ来てから毎朝繰り返している。
リンダには毎回注意されているが、ついつい口調が畏まってしまうのが本当に申し訳なかった。
一息ついた私は寝台の横に置かれた小さなテーブルに目を移す。
そこには母のハンカチが丁寧に畳まれて置かれていた。
母と暮らした証が、今は公爵邸の部屋にある。
本当にこの家に嫁いだのよね…?
昨日婚姻契約書に名前を書いた時のことを思い返す。
まだ夢を見ているような気分だった。
「奥様、朝食にいたしましょう。本日からは通常のお食事に戻りますので、お肉もございますよ。」
その言葉に私はパッと振り返る。
いまリンダはお肉と言っただろうか?
私のお腹がぐぅと音を立てた。
「ふふふ。早く準備いたしますね。」
そんな私の様子を見てリンダが微笑む。
少し恥ずかしくなったが、目の前に並んでいく美味しそうな料理たちにそんな気持ちは吹き飛んでいった。
朝食を終えた後、身支度をリンダに手伝ってもらう。
今日も庭園散策へ出かけることにした。
体力をつけるためだそうだが、私にとっては癒しの時間だった。
日傘を差してもらいながらゆっくりと歩く。
最初は自分で持とうとしたが、公爵夫人としてはこれが正しい形なのだそうだ。
公爵邸の庭園は広く、リンダがいなければ迷子になってしまいそうなほどだった。
四季折々の花々を楽しめるように作られているらしい。
庭園の一角に、涼し気に揺れる青色の花を見つけた。
確かこれは、前に庭師が教えてくれた花だったはず…
「これは、デルフィニウムだったでしょうか?たしか、花言葉は『あなたを幸せにします』でしたっけ?」
確かめるように、リンダに尋ねる。
「そうでございます。よく覚えていらっしゃいましたね。」
「一度聞きましたから。見ているだけで涼やかな気持ちになれますね。」
リンダは嬉しそうに微笑み、
「お部屋に飾りますか?」
と聞いてくれた。
「やめておきます。また見に来ますから。」
一瞬悩んだが、ここで咲いている方が花たちも幸せだろうと断った。
そんな時、ふと視線を感じた。
その方向を確認すると、公爵様が窓辺に立ってこちらを見ていることに気が付いた。
今、目が合ったかもしれない。
思わず肩が跳ねる。
私は慌てて視線をそらした。
「奥様、どうかなさいましたか?」
急に視線を遠くへやったり慌てたりする私の様子を見て、リンダが不思議そうにこちらを覗き込んだ。
「いえ、何でもないの。ただ、あちらの窓辺に立つ公爵様と目が合った気がして…慌てて逸らしてしまったの。」
「あちらって…私には窓があるのが分かるくらいですが。」
私が指さした方向を見たリンダが困惑の声を上げる。
「その建物の2階の窓辺です。もう公爵様はいなくなったみたいですね。」
「え…?…そんなに遠くまではっきりと見えるのですか?」
私の返答にさらに目を丸くするリンダ。
そんなに不思議なことだろうか…?
「他の鳥人より少し目がいいだけですよ。」
「そうでございましたか。では、庭園散策を続けましょう。」
リンダはまだ何か言いたそうだったが、それを飲み込んだように見えた。
再び庭園へと視線を向ける。
心地よい風が頬を撫で、周囲の木々を揺らす。
公爵家へ来てから穏やかな日々が続いていることが不思議でたまらない。
この幸せがずっと続いてくれたら…
そう願わずにはいられなかった。
最後までお読みいただきありがとうございます。




