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レイヤー95 呆れた結末


調査を終えてから


数日後、


乗り合い馬車で国を出た。


衛兵と市民が


激しく言い争いをしていたせいで


関所では入国の時より待たされた。


さらに数日後


帰路の途中で立ち寄った村では


『あの国』のその後が


話題になっていた。


「おい、知ってるか?」


「ああ…役人が何人もやられたってな」


禁呪の使用を疑われた


複数の役人が市民に拉致され


拷問の末に殺され


遺体が広場に晒されたらしい。


これをきっかけに


城の衛兵と市民が


小競り合いを繰り返すようになった。


やがて…


鎮圧に向かった騎士団と市民が衝突。


双方に死傷者が出た。


そして、内乱へ発展していった。


洋蔵は


黙って話を聞いていた。


だが、その話には


さらに続きがあった。


我々が滞在していた時から


すでに


王位継承を巡るクーデターが


起きていたらしい。


国全域で


急速に混乱が広がった。


「……やっぱりか」


あのそっけない態度は


もはやそれどころではなかったから。


あの黒塗りの報告書…


そこには


クーデターに関わる人物についての記載が


かなり含まれていたのだろう。


禁呪の情報を隠していたというより


国家そのものが


すでに崩れかけていたのだ。


そして、


さらに悪い知らせ。


捕縛された者たちの中から


魔物化する者が


続出しているという。


空間転移と魂の転写。


あの禁呪によって受けた負荷が


時間を置いて


肉体に現れ始めた。


城の牢屋と刑務所は、


地獄絵図になっているらしい。


洋蔵は、


しばらく黙っていた。


「……自業自得」


禁呪を使った者。


それを利用した者。


正義を振りかざした者。


情報を隠した者。


そして、


それを受け入れた社会。


誰か一人だけの責任ではない。


少しずつ積み重なったものが


最後に


厄災という形になった。


遅かれ早かれ


あの国には


厄災という名の人災が


起きていただろう。


洋蔵は馬車の窓から


遠ざかっていく国境を眺める。


何の建物かわからないが


煙が上がっているようだ…


ふと、


あの暴徒たちの姿を思い出す。


誰かの正しさを身にまとい


怒りに身を任せていた人々。


「怒りに身を任せるには…」


一拍。


「人生はあまりに短い」


怒りに費やした時間は


もう戻ってはこない。


正しさを証明するために


誰かを憎み続けても


失った時間は取り戻せない。


だから、


もう、他人の正義に


自分の人生まで


付き合うつもりはなかった。


「……もう時間外労働はしません」


研究員が黙って頷く。


洋蔵は


背もたれに身体を預ける。


「後は…自分たちでなんとかしてくれ」


馬車はゆっくりと


国境から離れていく。




ようやく


厄災潰しの出向も終わった。


世界規模の災害。


禁呪。


欲望。


救済。


正義。


そして


人災。


いくつもの厄災を追いかけて


最後に残ったのは


誰かを救う英雄譚ではなかった。


自分たちが撒いた種を


自分たちで刈り取る。


そんな


呆れた結末だった。

なにやってんだかね

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