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レイヤー88 勝手にしてくれ

もう黒塗りはいいよ…


現地に到着した。


都市国家。


そう呼ぶには


あまりにも巨大だった。


国境の関所を通過するだけで


丸一日かかった。


「…ひ…広すぎる」


洋蔵は


遠くまで続く街並みを眺める。


この都市だけで


いったいどれだけの人間が暮らしているのか


今回の事件が発生した場所も


一か所ではない。


市場。


住宅地


刑務所


スラム街


ギルド


酒場


兵舎


裁判所


これを一つずつ回るだけでも


数日はかかるだろう。


まずは


政府の諜報機関を訪れた。


最後の事案について。


詳しい情報を得るためだった。


しかし、歓迎されている…様子はない


「……こちらが現在の報告書です」


渡された書類を見る。


洋蔵は


嫌な予感がした。


ページをめくる。


黒塗り。


また黒塗り。


「……これ」


「集団恐慌についての最新報告です」


「新しい情報は?」


「調査中です」


「原因は?」


「不明です」


洋蔵は


黙ってページをめくる。


黒塗り


黒塗り


黒塗り


わかりやすいな…


「……みんな呆れてますよ」


同行していた研究員が


小声で呟く。


諜報機関の職員も


否定しなかった。


「我々としても、これ以上の情報提供は難しい」


「では」


「調査は自由にしていただいて構いません」


「自由に?」


「はい」


淡々と続ける。


「そちらで調査して分かったことがあれば報告書として提出してください」


洋蔵は


しばらく黙っていた。


「……なるほど」


要するに


勝手に調べろ


ということらしい。


「これなら」


研究員が皮肉っぽく笑う。


「解決できなくても責められませんね」


洋蔵も苦笑する。


そもそも


責任の所在が


どこにあるのかすら


分からない。


事件を起こした者。


被害を受けた者。


捜査した者。


情報を隠している者。


そして、


こちらに調査を押し付けた者。


誰が解決を望んでいるのだろうか?


「……こちらも」


洋蔵は


手元の報告書を見る。


「あちこち黒塗りで提出しましょう」


研究員が吹き出す。


「やめてくださいよ」


「…冗談です」


半分は本気だった。


洋蔵は報告書を閉じる。


政府からの情報提供は


期待できない。


なら、自分たちで調べるしかない。


まずは現場。


事件が起きた場所へ行き


そこで人に話を聞く。


被害者


目撃者


警備兵


店員


住民


誰でもいい。


報告書に書かれていない情報を


自分たちの目と耳で集める。


洋蔵は


巨大な都市を見上げる。


最後の事案


集団恐慌


禁呪の使用が疑われている。


だが、今のところ


何も分からない。


「行きましょう」


洋蔵が歩き出す。


「勝手に調べろ、と言われたんです」


一拍。


「それなら…」


「勝手にやらせてもらいましょう」


最後の調査が始まった。

なぜ禁呪なのか

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