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レイヤー87 面倒な事案の推察

調べてみたら…


全てのページで


黒塗りだらけの報告書。


読めば読むほど


分からなくなる


残されている文章から


推察するしかない。


文面から


いくつかの黒塗りには


人名が記載されているようだった。


その人物のプロフィール


所属


経歴


犯罪歴


あるいは


何らかの関係者。


禁呪に関する情報を隠しているというより


こちらに知られては困る何かがある。


そんな印象だった。


他国からの介入。


国家間の事情を考えれば


ある程度は仕方がない。


だが、


これでは調べようがない。


「……それでも」


洋蔵は


報告書を閉じる。


「やらなければいけない」


情報がないなら


残された結果から


逆算するしかない。


まず、集団恐慌。


暴徒化した市民。


これまで確認された事例を見る限り


精神汚染系の魔法が


何らかの形で使われている可能性が高い。


ただ、


それだけではない。


恐慌状態に陥った人間の行動が


あまりにも一様ではない。


何か別の術式が


組み合わされている。


だが、


それが何なのかは


まだ分からない。


そして、被害状況。


負傷者は多い。


だが、


死者は出ていない。


ここが妙だった。


まだ違和感の正体はわからない。


暴徒による襲撃。


これだけ繰り返されているのなら。


普通なら


死者が出てもおかしくない。


それなのに死者はゼロ。


一方で、事件後に。


処刑された者がいる。


調べられる範囲では


元々、


お尋ね者だった者。


あるいは


何らかの罪を犯していた者。


事件の最中に捕縛され


その後、正式な手続きを経て。


処刑された。


「……なるほど」


洋蔵は


資料の黒塗りを見る。


この部分は


その罪人についての情報かもしれない。


事件そのものの核心ではなく


処刑された人物の身元。


犯罪歴


所属


そういった情報を


こちらに伏せている


可能性はある。


だが、それなら


ひとつだけ


はっきりしている。


処刑そのものは


因果律への干渉ではない。


人間社会のルール


国によって多少の違いはあるが


罪を犯した人間を人間が裁く。


それは、人の社会が


人の手で決めることだ。


魔法に


裁きを委ねる必要はない。


「罪と罰は」


洋蔵は静かに呟く。


「人の裁量に委ねられるものです」


だから、


処刑されたこと自体は


厄災の一部とは考えにくい。


問題はその前


なぜ、人々は突然


恐慌状態に陥ったのか。


なぜ、


死者が出なかったのか。


なぜ、


この国だけで


繰り返し発生するのか。


そして


なぜ、


これほどまでに


情報が隠されているのか。


洋蔵は


黒塗りの報告書を見つめる。


「……面倒な事案だ」


最後の調査対象。


なのに


最初から手掛かりがない。


分かっているのは


人が狂ったこと


人が傷ついたこと。


そして、何人かの罪人が


裁かれたこと。


それだけ


「さて……」


洋蔵は


もう一度


黒塗りの向こう側を推察する。


この事件には


まだ


何かが隠れている。


それが禁呪なのか


それとも


禁呪よりも


この国にとって不都合な


別の何かなのか


現時点では


判断できなかった。

調べられて困ることだらけだった


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