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レイヤー86 隣国に出向

調べられると困るから

黒塗りになる


村での詳細をまとめ


報告書を配達員に渡してから


村を後にした。


次の出向先は


国境を越えた隣国。


都市部で発生している


最後の事案だった。


集団恐慌。


それが、今回の調査対象。


突然、何の前触れもなく


市民の一部が暴徒化する。


そして、周囲の人間を襲う。


被害者が増える。


警備兵が鎮圧する。


しばらくすると


何事もなかったように収まる。


それが、


何度も繰り返されている。


報告書を読む。


「発生地点……」


国内全域。


市場


住宅地


刑務所


スラム街


ギルド


酒場


兵舎


裁判所


「……関連性がないな」


場所だけを並べても


共通点が見つからない。


人間関係


時間帯


天候


魔力濃度


被害者の年齢


職業


どれを調べても


規則性がない。


さらに、


報告書そのものがおかしい。


黒塗り。


黒塗り。


また黒塗り。


「調査中」


「原因:不明」


「詳細:非公開」


「該当資料なし」


そんな記述ばかり。


洋蔵は、しばらく黙って


資料を閉じた。


「……これ」


研究員が尋ねる。


「何か分かりましたか?」


「何も」


即答だった。


これまでの事案には


少なくとも


術式の痕跡や


使用者の存在。


被害の規模。


何らかの手掛かりがあった。


だが、今回は違う。


情報そのものが


欠落している。


隠されているのか


調査できていないのか


それすら分からない。


「最後の事案が」


「これですか」


「そうらしいですね」


洋蔵は窓の外を見る。


国境を越えた先。


巨大な都市が


視界に入ってくる。


人が多い。


建物も多い。


魔導灯が並び。


街道には


商人や旅人が行き交っている。


一見すれば


復興の影響を感じさせない。


平穏な都市だった。


だが


そのどこかで


人間が突然


人間を襲う


理由もなく


前触れもなく


そして


誰も原因を説明できない。


「……この国では何が起きているんだ」


洋蔵は


小さく呟いた。


資料をもう一度開く。


市場


住宅地


刑務所


スラム街


ギルド


酒場


兵舎


裁判所


まるで、


都市そのものを無差別に


切り取っているようだった。


「関連性がないんじゃない」


洋蔵は


資料の地図を眺める。


「まだ…」


一拍。


「関連性を見つけられていないだけかも」


都市の喧騒。


人々の話し声。


馬車の音。


遠くで鳴る鐘。


その中に


何かが潜んでいる。


これが最後の事案。


そして、ここまで来ても


厄災の全体像は


まだ完成していなかった。

調べて欲しいけど

知られたくないので

黒塗りになる

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