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レイヤー81 能天気


村は


利益を得ていた。


行商人が滞留する。


宿が埋まる。


食堂が賑わう。


酒場も


娼館も


連日のように満員だった。


異常気象によって


街道は壊れた。


物流も止まった。


それでも


この村だけを見れば


景気は良い。


洋蔵は


まず村長から話を聞くことにした。


「こんなことは」


村長は


何度も首を横に振る。


「今まで一度もありませんでした」


異常気象。


突然の豪雨。


落雷。


極端な寒暖差。


オーロラ。


どれも


この地域では


前例がない。


それ以上の情報は


ほとんどなかった。


「なるほど」


洋蔵は記録を取る。


だが、手掛かりにはならない。


次に


行商人たちを調べる。


商人の一人が洋蔵を見る。


「調査ばかりじゃ疲れるだろ」


「たまには息抜きしたらどうだ?」


洋蔵は少し考える。


確かにここ数日は


まともに休んでいない。


「……そうですね」


たまには


息抜きくらいしてもいいだろう。


その商人と別れたあと


妙に香水の匂いが残った。


「……香水がきつい」


研究員が笑う。


「遊んできた後じゃないですか?」


洋蔵は


何も答えなかった。


調査結果は


やはり、たいしたものではない。


行商人たちも


異常気象について。


「こんなのは初めてだ」


その程度だった。


市場も調べる。


物流が止まっている。


在庫は日に日に減っている。


「あと数日でしょうね」


市場の商人が言う。


街道が復旧しなければ


食料も生活物資も底をつく。


それ以上は調べても


たいした情報はなかった。


「……何もない」


洋蔵は


資料を閉じる。


今回も手掛かりなし。


だが、その日の夜


雨が止んだ。


翌朝、


空は晴れていた。


風も穏やかだった。


気温も正常。


雷もない。


それまで


あれほど荒れていた空が


嘘のように


静まり返っている。


「……終わった?」


研究員が空を見上げる。


洋蔵も空を見る。


もし、誰かの意思によって


この気候が操作されていたのなら


あまりにも短絡的すぎる。


調査員が尋ねる。


「原因が分からないまま」


「止まったということですか?」


「そういうことになります」


洋蔵は空を見る。


晴天。


穏やかな風。


何事もなかったような村。


商人たちは


今日も酒場へ向かう。


宿は、まだ賑わっている。


村は今日も


能天気だった。


洋蔵は


ため息をつく。


「……まったく」


一拍。


「訳が分かりませんね」


厄災の兆候。


禁呪。


異常気象。


その原因を探して


ここまで来た。


なのに分かったことは


ほとんどない。


そして


異常気象は


何の前触れもなく終わった。


洋蔵は


調査資料へ


新たな一行を書き加える。


――異常気象、終息。


その下に。


小さく。


――原因、不明。


円はまだ


完成しない。

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