レイヤー78 異常気象の村
え〜っと
なにをするんだったっけ?
重い…
足が、
思うように動かない。
それでも、
鐘の音が聞こえる方へ
歩き出した。
雨は、まだ止まない。
泥に足を取られる。
一歩。
また一歩。
歩くたびに
記憶が少しずつ戻ってくる。
「……そうだ」
土石流。
山肌が崩れた。
濁流。
岩。
木々。
地響きがする方を
確認しようとした
周りで誰かが何かを叫んでいた
「**なー***ろ!」
「***ぉー!」
次の瞬間
凄い勢いで背中を突き飛ばされた。
圧倒的な質量の岩が
さっきまで自分が居た場所を
通り過ぎた。
直撃だけは免れた。
そのあと…
流された。
そこで、意識を失った。
ポケットへ手を入れる。
くしゃくしゃになった紙が
淡く光っていた。
魔法陣。
バフ術式。
自動回復術式。
雨で滲み
もうほとんど限界だった。
洋蔵は小さく笑う。
「……助かりました」
術式は
最後の光を放ち
静かに消えた。
僅かに残る魔力と引き換えに
役目を終えた。
鐘の音は
次第に近づく。
やがて
小さな村が見えた。
村の中央。
物見櫓。
見張りが
鐘を鳴らしている。
避難を促す音。
警戒の音。
村人たちが。
慌ただしく動いていた。
洋蔵は。
そこで立ち止まる。
「……思い出した」
今回の任務。
禁呪の調査。
目的地は
異常気象が頻発する地域。
予兆もなく。
豪雨。
暴風。
落雷。
季節外れの積雪。
そして。
土石流。
報告書には
すべて。
因果律への干渉が疑われると記されていた。
洋蔵は
空を見上げる。
黒い雲。
止まない雨。
さっきまで。
晴れていた形跡がある。
なのに
今は
嵐。
自然ではない。
「……ここか」
誰に聞くでもなく。
呟く。
村人の一人が
洋蔵に気づく。
「旅人か!」
「早くこっちへ!」
「またすぐに降り出すぞ!」
その言葉と同時に
遠くで。
雷鳴が響いた。
まるで
空そのものが
唸っているようだった。
洋蔵は
濡れた報告書を握り直す。
厄災。
六つ目。
異常気象。
ここから
また一つ
禁呪の痕跡を追うことになる。
まだやるべきことがある




