レイヤー74 結界の使い方
大事なものを隠す
結界の解析を始めて数日。
難航していた。
想像以上に
数が多い。
一枚
二枚
そんな話ではない。
幾重にも
幾重にも
重ねられている。
洋蔵は
解析結果を見ながら
眉をひそめた。
「…これは…多すぎる」
研究員も同じだった。
「侵入防止だけで」
「ここまで必要なのか?」
違う。
どうやら
途中から
様子がおかしいのだ。
外側から確認できる結界は…
侵入を防ぐ。
音を遮断する。
光を遮断する。
姿を隠す。
外部からの干渉を防ぐ。
どれも一般的な結界だった。
時間はかかるが
どれも解析・解除はできる。
問題はそのさらに内側。
洋蔵が術式の向きを確認する。
「……向きが」
「変わっています」
研究員が覗き込む。
結界の構造。
魔力の流れ。
遮断方向が
外から内へ
ではない。
内から外へ。
研究員が言葉を失う。
「待て」
「これは」
「内側からの衝撃を」
「抑えているのか?」
洋蔵は頷く。
一枚ではない。
二枚でもない。
多重。
何重にも。
内側から外へ向かう力を
抑え込む。
爆発。
衝撃。
魔力奔流。
それらを
外へ逃がさない。
研究員が呟く。
「……どういうことだ」
洋蔵は答えない。
もう一度。
結界を解析する。
外側。
侵入を防ぐ。
内側。
脱出を防ぐ。
つまり
この施設は
外から入れない。
そして
中から出られない。
研究員がゆっくり顔を上げる。
「閉じ込めているのか」
一拍。
「それとも」
「閉じ込められているのか」
洋蔵は結界の奥を見る。
教祖がいる。
そこには何がある。
何を封じている。
何から守っている。
何を守っている。
なぜ守らなければいけない。
さっぱり分からない。
「……何がしたいんだ」
研究員が呟く。
洋蔵は答えない。
ただ
膨大な数の結界を
一枚ずつ
解析していく。
結界とは
侵入を防ぐもの。
そう思っていた。
しかし
それだけではない
守る。
隠す。
遮る。
抑える。
閉じ込める。
そして
時には
外へ出さないために使う。
洋蔵は図面を見つめる。
「結界の使い方を」
「根本から考え直す必要がありそうですね」
研究員が苦笑する。
「この国に来てから」
「ずっと考え直してばかりだな」
洋蔵は結界の奥を見つめる。
「……何がいるんでしょうね」
答えは
まだ
結界の向こう側だった。
本当に大事なものとは




