レイヤー73 宗教国家に出向
宗教関連はちょっと苦手です
次に向かうのは隣国。
新興宗教を中心に形成された
宗教国家だった。
禁呪の使用者は
すでに判明している。
ここの教祖。
ただし
施設には厳つい多重結界が張られて
近づくことすらできない。
研究員が報告書を読み上げる。
「厄災以前から予言を行っていた」
「災害、戦争の勝敗、国の悪政…」
「民を導くには充分な功績だな」
「それで信仰を集めていたらしい」
「だろうな」
洋蔵は資料をめくる
「厄災が起きてからは?」
「予言どころか」
一拍。
「堂々と禁呪を使っている」
信者から集めた莫大な資金。
その大半が
教祖自身の人体改造に使われている。
皮膚。
眼球。
舌。
臓器。
骨。
全身に魔法陣を刻み込む。
さらに
体内には畜魔力装置。
研究員が顔をしかめる。
「人間兵器かよ」
「それが…攻撃の術式はありません」
洋蔵は即答する。
「確認されているのは…」
「催眠、誘惑、幻覚、麻痺」
「状態異常系ばかりですね」
研究員が報告書を見る。
「なら何のためにこんな…」
洋蔵は一枚の資料を抜き出す。
予言。
天啓。
厄災の発生予告。
そして
的中率。
異常なほど高い。
「こっちは完全に未来予知ですね」
「禁呪…」
研究員が沈黙する。
厄災を予言したことで
教祖は一躍有名になった。
人々は
彼を預言者と呼んだ。
天啓を受けた聖人。
未来を知る救世主。
だが、実態は違う。
魔法で未来を見ている。
それを信仰へ変えている。
洋蔵が資料を閉じる。
「目的は何でしょうね」
「信者を増やしたいのか」
「富か名声か」
研究員が苦笑する。
「どれにしたって」
「長生きはできなさそうだ」
洋蔵は黙る。
全身に刻まれた魔法陣。
体内に埋め込まれた畜魔力装置。
異常な量の術式。
普通の人間なら
神経が耐えられない。
正気を保つのも難しい。
魔力回路が焼き切れる。
肉体そのものが
術式に食われる。
それでも
教祖は生きている。
予言を続け
信者を導き
国家を動かしている。
洋蔵が多重結界を見上げる
「……よく制御できていますね」
研究員が答える。
「制御しているのか?」
洋蔵は少し考える。
「分かりません」
一拍。
「もしかすると」
「もう」
「制御しているのは」
「彼ではないのかもしれません」
結界の向こう側。
宗教国家の中心。
教祖の姿は
まだ見えない。
だが
その存在だけは
国中に知れ渡っていた。
予言。
信仰。
禁呪。
人体改造。
未来。
そして
多重結界。
洋蔵は静かに図面を広げる。
「まず」
「この結界をどうにかしましょうね」
研究員が尋ねる。
「最強の魔法は?」
洋蔵は結界の向こうを見つめる。
「未来を知ることではありません」
一拍。
「未来を選べることです」
今度の敵は結界だった…




