↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
71/98

レイヤー70 共同墓地に出向

うぅ…

おぉぇぇ…


次の出向先は


もっとも苦手な案件


歩く死体の調査。


強烈な腐敗臭が漂う共同墓地だった。


現地到着。


ちなみに到着の少し前に


今朝、美味しくいただいたはずの食事と


感動の再会をはたした…


…ぅぷ


この地域では


身元の分からない者や


冒険者や孤児などが埋葬される


広大な共同墓地のエリアがあるのだが


今は主に


厄災で亡くなった身元不明の者たちが


安らかに眠る場所となっている。


この世界では


身元の分からない遺体は土葬される


もちろん衛生面での問題はある


それでも


野ざらしよりは遥かにましだった。


一方、


平民以上の身分になると


しっかりと火葬された後に


管理された区画の墓地に埋葬される。


地域ごとに風習の違いはあるが


この世界では


これが一般的な弔い方のようだ。


研究員が報告書を閉じる。


「これは…妙だな」


洋蔵は頷く


アンデッドとして発見された遺体


その大半は


最近土葬されたものだった。


さらに


厄災の被災者ばかり。


墓地を歩く。


墓標が続く。


静かだった。


研究員が呟く。


「噛まれたら感染」


「…なんて話はないらしいな」


洋蔵は首を振る。


「ありません」


「空気感染も確認されていません」


「生者を襲う事例もありません」


「死人だと気が付かずに声をかけた人もいます」


映画やゲームで有名な


あのクリーチャーとは違うらしい


研究員は困惑する。


「じゃあ…何のために歩いているんだ?」


一拍。


墓を掘り返す。


遺体を調べる。


術式痕。


魔力残滓。


どちらも残っていた。


洋蔵が静かに言う。


「この死体には」


「一度魔法が使われています」


「不完全ですが蘇生を試みてますね」


「さらに、無理やりな方法で」


「欠損した腕や足には…」


「別の遺体から取ってきた四肢をつけています」


研究員が眉をひそめる。


「うっ…わざわざ余計な報告を…」


「…おかげで吐き気が…また」


「ぉえ…で、命令系統の術式は?」


洋蔵は首を横に振る。


「みあたりませ…ぅぷ」


「…」


沈黙。


誰も襲わない


誰も追わない


誰も叫ばない


ただ歩く


昼も


夜も


目的もなく


墓地を離れ


街を歩き


森へ入り


また戻る


研究員の背筋に寒気が走る。


「……失敗作か」


洋蔵は考え込む


「違いますね」


一拍。


「何かが足りません」


蘇生だけ


生命だけ


動くだけ


人格も


命令も


意思も


存在しない


歩く理由だけが


失われている


墓地を見渡す


夥しい数の足跡


夥しい数の墓穴


厄災で命を落とした人々


彼らは


何を求めて


歩き続けているのか


研究員が小さく呟く


「目的は何だ」


洋蔵は静かに答える。


「まだ…分かりません」


長い沈黙。


「ですが」


墓石に手を添える。


「死者は」


一拍。


「起き上がって歩いたりしません」


円が更新される。


土葬。


蘇生。


彷徨。


残滓。


未完。


墓標。


研究員が最後に尋ねる


「最強の魔法は?」


洋蔵は共同墓地を見渡しながら答える


「死者が安らかに眠れることです」

む…無理…ぅぷ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。