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レイヤー69 憂国の落日

結局のところ

目的はわからないまま…


領主の顔を知っている者に声をかけた。


周辺の警備にあたっていた騎士団も交えて


捜索は続いた。


地下。


基礎構造。


最深部。


そこで


領主は見つかった。


研究員が息を呑む。


「…これは…どうなってるんだ」


洋蔵は答えない。


周囲を術式で照らす。


研究員の集まる場所へ近づく。


ようやく理由が分かった。


最初の捜索では見つからなかった理由。


身体の八割ほどが


モニュメントと融合していた。


壁でもない


建材でもない


もはや人間でもない。


境界が消えていた。


脈打つ根。


蠢く魔法陣。


その中心に


領主だけが埋め込まれている。


研究員が呼びかける。


「おーい、聞こえるか?」


へんじがない…


ただのしかばねのよぅ…


ん?いや反応した


ゆっくりと


瞳だけが動く


洋蔵は静かに首を振る


「意思の疎通は…」


一拍


「諦めた方がいいでしょう」


「もうこれは…」


「術式の一部です」


沈黙。


その瞬間も


地上では


石が砕け


木が分解され


建物が飲み込まれていく。


自動建築術式。


止まらない。


洋蔵は図面を広げる。


「建築を停止します」


研究員が頷く。


「できるのか?」


「誰かの意思で建てる術式であるなら」


一拍。


「その逆も作れます」


新しい魔法陣。


自動分解再構築術式。


建設ではない。


資源化。


巨大なモニュメントが


ゆっくりと崩れ始める。


石は石材へ。


鉄は鋼材へ。


木は建材へ。


瓦礫は資源へ。


研究員が見上げる。


「全部を戻すのか」


洋蔵。


「この調子だと数か月は掛かりますけどね」


夕日が差す。


赤く染まる塔。


少しずつ


少しずつ


消えていく。


洋蔵は小さく呟く。


「……まったく」


一拍。


「自動…いや、勝手に残業するなんて」


「働きすぎな領主さまです」


研究員が苦笑する。


「最後はどうするんだ」


洋蔵は領主を見る。


禁呪級封印術式。


静かに起動する。


術式は


領主の感じている時間の流れを止めた。


時間の止まった世界へ閉じ込められる。


ただし


意識だけは動く。


終わらない仕分け。


終わらない資源整理。


終わらない再構築計画。


積み上がる。


終わらない残業。


そんなに働きたいなら


せめて


周りに迷惑かけないでください。


研究員が呟く。


「……また36協定違反か」


洋蔵は真顔で答えた。


「この建設現場の責任者ですからね」


「最後まで責任を取ってもらいます」


術式が閉じる。


三人目の封印。


作業を終えて地上に戻ると


夕陽は


塔と共に沈み始めていた


長い沈黙。


研究員が口を開く


「…なあ、どうして」


「こんな連中が」


「禁呪へ辿り着けるんだ」


洋蔵は


ゆっくりと少しずつ解体されていく


モニュメントを見つめたまま答える


「私にはさっぱり…わかりませんよ」


一拍。


「どうせ理解もできません」


風が吹く。


赤く染まった街。


復興はまた少しだけ


遠回りになった。


円が更新される。


侵食。


再構築。


資源。


封印。


責任。


落日。


研究員が最後に尋ねる。


「最強の魔法は?」


洋蔵は


夕焼けに染まる街を見つめながら静かに答える。


「誰かの傲慢(ごうまん)ではなく…」


一拍。


「みんなの理想を積み上げることです」

全てわかろうとするのは

人間の傲慢だよ

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