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レイヤー63 違反者に鉄槌を

戦いませんよ

強くもないし

おっさんですから


供給網は途絶えた。


工房は押収された。


残ったのは


開発者だった


研究員が資料を机へ置く。


「捕まえた」


洋蔵は顔を上げる。


部屋へ連れて来られた男は。


見覚えがあった。


「…はぁ…久しぶりですね」


元研究員だった。


かつて


畜魔力装置の開発に携わった技術者。


男は悪びれもしない。


「そんな顔をするなよ」


「俺も開発者なんだ」


「自分の知識と技術を使って何が悪い?」


洋蔵は黙って聞いている。


男は続ける。


「製造も販売も組織がやったんだ」


「俺は設計をしただけだ」


「謝れば済む話だろ?」


部屋が静まり返る。


研究員が洋蔵を見る。


返事はない。


長い沈黙。


やがて。


洋蔵が口を開く。


「…すみません」


男が笑う。


「ほらな」


「謝罪では…」


一拍。


「済みません」


その声はひどく静かだった。


静かだからこそ


冷たい怒りが伝わる。


「人を壊すために」


「設計した覚えはありません」


「あなたは…」


「設計者として、越えてはいけない一線を越えました」


洋蔵は一枚の魔法陣を広げる。


研究員が目を見開く。


「おい!」


「それは……」


禁呪級封印術式魔法陣(洋蔵カスタム)


本来は


世界そのものへ干渉する術式を封じるためのもの。


人へ対して使うことなど


全く想定されていない。


男の顔色が変わる。


「ちょ、おい!待て」


「何をする気だ?」


洋蔵は静かに答える。


「封印ですよ」


術式が起動する。


男の足元へ魔法陣が広がる。


鎖ではない。


檻でもない。


封じられたのは


『時間の感覚』だった。


終わらない作業。


終わらない確認。


終わらない修正。


終わらない是正。


積み上がる仕事。


減らない仕事。


完了しない仕事。


意識だけが


時間の停止した


何もない世界に囚われて


無給で残業し続ける。


研究員が呟く。


「…な……これは」


洋蔵。


「36(サブロク)協定違反です」


男が叫ぶ。


「やめろ!」


「嫌だ!」


「終わらないだろ!!」


洋蔵は表情を変えない。


「安心してください」


一拍。


「無給ですから」


部屋に沈黙が落ちる。


研究員が額を押さえる。


「…お前」


「怒ると怖いな」


洋蔵は術式を閉じる。


「封印は解除できますよ」


「反省し」


「責任を果たし」


「被害の回復に協力するなら」


「…その日が来るまで」


静かに告げる。


「自分の罪と向き合ってください」


円が更新される。


色欲。


贖罪。


封印。


是正。


抑止。


鉄槌。


研究員が最後に尋ねる。


「最強の魔法は?」


洋蔵は答える。


「自分の技術に、最後まで責任を持つことです」

陽はまたのぼらない…

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