表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45歳DTPデザイナーは36協定違反で異世界出向  作者: 洋蔵
異世界でも人間は弱い
PR
61/69

レイヤー60 残業時間が超過される魔法

魔法が万能すぎると

社会性が失われて

向上心もなくなり

魔法に頼りきって

退化するだろうね

研究は続いていた。


いつものことだった。


研究員が資料を放り投げる。


「できたぞ」


洋蔵が目を通す。


沈黙。


「……本当に?」


「本当に」


資料には一行だけ書かれていた。


老化停止。


研究室が静まる。


誰も喜ばない。


誰も騒がない。


研究員が言う。


「なんでそんな顔なんだ」


洋蔵は資料を閉じる。


「困りました」


「何が」


「できてしまいました」


一拍。


魔法医療。


細胞修復。


代謝制御。


炎症抑制。


病巣管理。


再生補助。


積み上げた技術。


それらを組み合わせる。


すると。


老化が止まる。


研究員が言う。


「つまり不老不死か」


洋蔵は首を振る。


「いや少し違いますね」


死なないわけではない。


事故。


戦闘。


毒。


災害。


死因は残る。


ただ老いない。


寿命だけが消える。


研究員が笑う。


「それで十分だろ」


だが


洋蔵は資料の最後を指差した。


脳。


思考力。


記憶容量。


学習限界。


認知負荷。


研究員の顔が曇る。


「あぁ……そういうことか」


どれだけ身体を維持しても。


脳は記録し続ける。


視覚、聴覚、嗅覚、触覚…


身体はあらゆる刺激を記録する。


思い出。


知識。


経験。


後悔。


喪失。


何百年。


何千年。


蓄積される。


いつか限界は来る。


洋蔵。


「保存媒体ではありません」


「人間です」


研究員。


「だったら忘れればいいのか」


「自分が何者かわからなくなり人格が壊れます」


沈黙。


誰も反論できない。


結局。


不老不死は可能だった。


因果律への影響も少ない。


世界均衡も崩れない。


理論上は…。


望むならいくらでも生きられる。


研究員が言う。


「じゃあ…使ってみるか?」


洋蔵は考える。


長い沈黙。


そして。


首を振る。


「いいえ」


「やりたいことがある人だけで十分です」


一拍。


「私は…今でも忙しいので」


研究員が吹き出す。


「お前いつまで働く気だ?」


洋蔵。


「仕事が終わるまでです」


「…終わらないだろ」


「でしょうね」


静かな笑い。


やがて…


図面が閉じられる。


封印指定。


最高機密。


閲覧制限。


理由。


危険だからではない。


便利すぎるから。


円が更新される。


延命。


維持。


記憶。


人格。


限界。


選択。


研究員が最後に問う。


「最強の魔法は?」


洋蔵は答える。


「定時で帰れる魔法です」


沈黙。


研究員。


「よし…それを作れ!」


洋蔵。


「不老不死よりも難しいです」

永遠に働き続ける…だと

それは絶対に嫌だ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ