レイヤー59 対価を払い見返りを得る魔法
何かおかしいと思わなかったか?
本当は気づいてたんだろ
魔法は便利だった。
だが。
研究員が報告書を置く。
「問題が出た」
洋蔵は資料を見る。
沈黙。
そして小さく呟く。
「やはり」
原因はバフだった。
筋力強化。
反応速度向上。
思考加速。
身体能力上昇。
戦闘では有効。
作業効率も高い。
だが。
代償があった。
心拍数増加。
代謝暴走。
神経過負荷。
老廃物蓄積。
研究員が言う。
「身体が追いついていない」
洋蔵。
「はい」
一拍。
「生命活動を前借りしています」
沈黙。
さらに調査が進む。
高出力運用者。
寿命低下。
内臓障害。
循環器異常。
脳機能障害。
記録が並ぶ。
「強くなるほど削れている」
誰かが呟く。
円が更新される。
強化ではない。
加速。
生命そのものの加速。
そして。
別の発見が起きる。
研究員が新しい資料を持ってくる。
「こっちは逆だ」
デバフ。
衰弱。
鈍化。
抑制。
本来なら忌避される術式。
だが。
病院で結果が出ていた。
病巣縮小。
炎症抑制。
症状安定。
進行遅延。
洋蔵が資料を見る。
「延命です」
研究員。
「治療じゃないのか」
「違います」
一拍。
「時間を稼いでいます」
病は治せない。
だが。
病気の進行は遅らせられる。
手術まで。
薬が効くまで。
身体が回復するまで。
時間を買う。
さらに。
予想外の応用。
培養施設。
微生物。
菌類。
研究員が驚く。
「増えている」
バフ付与。
増殖促進。
代謝加速。
抗生物質生成量増加。
発酵効率向上。
有用物質生産。
洋蔵。
「人に使うより安全です」
一拍。
「負荷も管理できます」
研究員が笑う。
「結局」
「バフもデバフも悪くないな」
洋蔵は頷く。
「はい」
「使い方の問題です」
円が更新される。
加速。
抑制。
代償。
延命。
培養。
応用。
一拍。
魔法は奇跡ではない。
何かを得る。
そのために何かを支払う。
研究員が問う。
「最強の魔法は?」
洋蔵は静かに答える。
「払う代価を理解することです」
バフは生命の前借り
デバフは時間を買う




