レイヤー49 誰かの想いを嗣ぐための魔法
復旧は進む。
暮らしは戻り始める。
だが研究員が言う。
「人は残らない」
一拍。
「時間が足りない」
洋蔵は静かに頷く。
「だから繋ぎます」
図面が開く。
新しい魔法。
戦わない。
支えもしない。
残すための魔法。
記録術式。
紙ではない。
燃える。
劣化する。
失われる。
媒体が変わる。
石。
石板。
碑。
希少鉱物。
錬金精製物。
長期保存媒体。
術式刻印。
情報固定。
記憶転写。
研究員が眉をひそめる。
「記録じゃないな」
「…再現か」
洋蔵。
「はい」
第一系統。
記憶写像術。
視覚。
聴覚。
感情断片。
体験の保存。
単なる文章ではない。
「その場」が残る。
第二系統。
知識封入術。
技術。
設計。
理論。
術式構造。
圧縮記録。
再展開可能。
第三系統。
継承起動術。
触れる。
接続する。
再生される。
教育装置。
「読む」のではない。
体験して「伝承」する。
第四系統。
耐久媒体設計。
侵食耐性。
魔力劣化防止。
長期安定化。
世代継承前提。
研究員が小さく笑う。
「本じゃないな」
洋蔵。
「遺すための器です」
一拍。
「人生は短い」
「だから」
石板に触れる。
過去が再生される。
誰かの声。
誰かの手。
誰かの失敗。
誰かの願い。
研究員が呟く。
「……繋がってる」
円が更新される。
記録。
保存。
再現。
継承。
伝達。
未来。
一拍。
生き残るだけでは足りない。
安息だけでも足りない。
人間らしさだけでも足りない。
それらを
次に渡さなければ
意味がない。
研究員が問う。
「最強の魔法は?」
洋蔵は答える。
「誰かの想いを」
一拍。
「次に渡せる魔法です」




