白の想起 Ⅳ
暗い廊下を歩いていく。
静かに、血の付いたナイフを手に持って。
「誰だ!」
「どこから入ってきやがった? アイツらは何してんだよ」
標的の内の三人は、ここに来る途中で終わらせている。
そして、残りの二人は目の前に。
恐怖は無い。
緊張も無い。
日常のように、私は他人から奪って生きる。
そして、仕事はすぐに終わった。
「……正面から襲ったのは初めてだな」
普段は背後から襲い、仕留めるのに成功しようが失敗しようが食料だけは奪い取っていた。
今回は奪うのが命だったから手っ取り早く正面から攻め込み、その結果として一つ気付いたことがある。
死に際、彼らは呪詛を吐いた。
心の底からの、偽りのない言葉を。
……他の人たちも同じだったのかな。
「……さっさと帰ろう」
答えの出ない思考なんてしてる場合じゃない。
厄介と言われた割には簡単だったからといって、勝手に休んでいては王子にどんな報告をされるか分からな────
「お父、さん?」
「ッ!?」
背後からの声。
それは、廊下にある扉の一つからした。
「…………子供?」
声のした方向には僅かに開いている扉があり、そこから五歳前後の子供が覗いている。
「お父さん」……誰かの子か?
何にせよ、ここに居るということは始末の対象だ。
早く殺さないと。
落ち着け。
大丈夫。子供は慣れて────
「………………」
そこで、思考が止まった。
「お父さん……ッ!」
父親の死体の元へ、子供が駆けていく。
けど、私にそれを止めることは出来ない。
しては、いけない。
──「標的は五人」
そう、五人だけだ。
あの宮廷魔導士に、魔術で位置を教えられた上でそう命令された。
命令外の行動は、してはいけない。
すれば、首につけられた魔道具が起動し、私は死ぬ。
「お父さん! 起きてよ、お父さんってば!」
背後から、子供の声がする。
振り返ると、ソレが見えた。
◾️と、◾️が。
吐き気がする。
ソレを見ていると、何故だか動悸が治らない。
ああ、とても────不快だ。
そこからどうやって戻ったのか、よく覚えていない。
だが、全ての敵を片付けて合流した宮廷魔導士の言葉だけは耳に残っている。
──「ああ、やっぱり厄介だったみたいだね」
──「可哀想に。君も、彼らも、みんな被害者なのに」
──「誰の? ……ああ、自分の境遇の原因すら知らずに生きてきたんだね」
──「君を、君たちを不幸に落としたのは、我が物顔で全てを奪う王族たちだよ」




