散る
ひし形になるように円の外側に伸びる四つの刃先が付いた、タンバリンほどの大きさの武器。
計三つ現れたそれが高速で回りながらノアの周囲の宙を舞い、風切音を鳴らす。
「……ああ、先回りした訳じゃなかったのか」
対する敵は動きを見せない。
両腕でノアの逃げ身を塞いだまま、何をするでもなく静止している。
だが、数は増えていた。
右の屋根に一体、左の屋根に二体。
前方の一体を含む計四体の、全く同じ見た目の敵がノアを囲って立っていた。
「まぁ、全員殺すから関係ないんだけど」
だが、そんなことは何の問題にもならない。
どの個体にもやはり魔力は感じられないが、それはつまり魔術を使えないということ。
何度も肉を切り裂いてきた彼女には、敵の肉の硬度は自身の武器を防ぐには足りないと分かっていた。
そして、現実はその通りに終結する。
ほんの数秒の交戦。
ノア自身は一歩も動かず、三つの武器が一人でに軌道を描き敵の体を切り刻んだ。
敵も迫り来る武器を破壊しようと動いたが、伸ばした腕は一つも届くことなく全てが切り落とされて地に落ちる。
そして、自身の腕が落とされたと認識し僅かに震えた頭部もまた、地面へと。
黒い体の切断部から吹き出した血の雨が止む頃には、四体全ての命が細切れとなって消えていた。
──よし。後は、身を隠してラマの応急処置を……。
四体の命は消えた。
それに間違いない。
それでも、屍の上を歩いてノアへと近付く命がある。
──……四体だけじゃなかったのか。
隠れていたか、あるいは新しく出てきたのか。
どちらにしろ、即座に切り捨てるべく武器を再び操作した。
刺さっていた地面から浮かび上がり、凶器が三方向から回転して襲いかかる。
「────え?」
攻撃は全て、防がれることなく届いた。
敵はその素振りすら見せず、纏っていた黒い霧ごと切り裂かれる。
それによって、顔が見えた。
そして、現実は終結する。
次の瞬間、ノアの体が無数の刃で切り裂かれることで。




