王についての語り
とある国に、一人の王子がいました。
圧政、階級差別が当たり前に存在していた国に生まれた彼は、周囲の人間と同じ腐った性格に育ちました。
傲慢で、常に誰かを見下し、けれど心のどこかで怯えてる。
元が多少はまともだったため、国の現状が理解出来てしまったのでしょう。
『王族貴族の黄金時代』、常に贅沢三昧の浪費国家。
そんな国が、どんな末路を辿るのかを。
けれど、分かっていながらその愚行を止めようとはしませんでした。
その味は一度知ったら手放せない。
望みが必ず叶う生活を知ってしまったら、我慢する普通の生活には耐えられない。
もう少しだけ、あと少しだけ。
そうやって誰も彼もが迫る破滅から目を逸らし、見えないフリをして堕落に溺れていく。
「みんながやってるんだ。なら、僕だって楽しんでもいいじゃないか!」
そんな言い訳をいつも心の中で唱えて、まだ王子だった頃の彼は湧き出る欲望に身を委ねた。
みんなと同じように、欲望のままに贅を貪り。
みんなと同じように、ただひたすらに楽をする。
義務を果たさず、研鑽をせず。
怠惰を繰り返す甘露の日々。
そして、彼が十六の歳を得た頃、運命の日が訪れました。
資源も住民の我慢も限界を迎え、ついに虐げられた者たちが王族貴族に反乱を起こしたのです。
そして彼は、王の座に立たされることになりました。
父の身代わりとして即位させられ、身代わりとして利用されたのです。
堕落した毎日を過ごしていた彼に、現状を解決する方法を思いつくだけの知識は無く、それを教えてくれる者もいませんでした。
責任の全てを押し付けられ、国民全員の憎悪の的となった哀れな新王。
彼が王として君臨した期間は、世界でも稀に見る短さで終わる────筈でした。
王国全てを飲み込む『災害』と、『竜を従えた女騎士』さえ現れなければ。




