白髪碧眼の魔女
「さて、これでこの場に居るのは魔女だけになった訳だけど」
枝が地中へと消えていくのを見送った後、アルカナと名乗った魔女はノアたちの方へ向き直る。
そして、両手をゆっくりと上げ────
「話そう! ちょっとだけでも!」
警戒するノアたちに対し、両手を胸の前で合わせながら満面の笑顔でそう告げた。
「話? ……何の」
「いい質問だね、ノアくん。何を話すかと言えば当然、『なんで私は世界を終わらせるのか』! その聞いた後に疑問やら興味が湧いたのなら、それについても答えるよ」
「え、なんで……?」
随分な親切さに逆に不気味さを覚えたアズレイユが、思ったままの言葉を口に出す。
質問されたのが嬉しかったのか、あるいは疑問の内容が気に入ったのか、アルカナは笑みで細まった瞳をさらに細めた。
「だって、何も知らないまま死ぬのは味気ないじゃん」
味気ない────その言葉を聞いた瞬間、ノアとアズレイユは今まで感じていたものの答えに思い至る。
魔女が自分たちに向けていた視線。
それは、獣が好物の餌に対して向けるものと同じであると。
「ああ、先に答え言っちゃったな。まぁ、つまり……私は君たちを美味しく頂きたい訳だよ。もっと苛烈で! もっと濃く!!」
両手を掲げて天を仰ぎ、魔女は興奮しながら叫ぶ。
その声に呼応するのように彼女の周囲の地面が大きく盛り上がり、地中から枝ではなく城ほどの大きさの巨大な一本の幹が現れた。
「その結果、人類は滅ぶ。ついでに、世界も終わる」
幹から伸びる枝に乗りながら、魔女アルカナは首を傾げて問う。
「君たちも、食べられてくれる?」
「「断る」」
即答。
迷いも怯えも一切無い。
二人同時に拒絶の意思を示し、ノアの放った氷の矢が敵へ向けて突き進む。
「いっひ! いいねぇ、それでこそ食べがいがあるってもんだ!」
矢は伸びてきた枝が盾となったことで軌道を曲げられるが、通った箇所の空気を凍らせることで二人に道を作る。
大興奮のままに迎え撃とうとしていたアルカナは、その光景に一つ疑問を吐いた。
「ウェンディは、どこへ行った?」
「えっ」
不意に白けた視界が元に戻ると、ウェンディはそこに見えた景色に思わず驚きの声を出す。
そこには地面も空も無く、薄桃色の霧が全方位に満ちている。
その霧の奥から、歩いて近寄ってくる一つの人影が見えた。
「────」
警戒しながらその場で待っていたウェンディは、現れた者の正体に言葉を失う。
白い髪、碧い瞳、そして真っ黒のコート。
現れた少女は、ウェンディに向けてニコリと笑いかける。
「ひさしぶり、ウェンディ」
「────師匠」
それは、己が師匠。
ウェンディに、魔女になる道を示した者。
少女は体を半分今来た方向へ向け、その先を指でさす。
「細かいことは歩きながら話す。行こう、君の始まりの場所へ」




