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異界の鏡  作者: リーグス
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110/114

 王子は見た。

 自身の投げた槍が、敵の放った矢に打ち砕かれるのを。

 避ける間もなく、矢が体を貫いていく。

 

 彼は見た。

 長い刹那の時間で、今までに見てきた者たちの『目』を。

 

 ──お前たちは、何故求められる。

 ──お前たちは、何故恐れない。

 

 ──俺は怖い。変わらない現在(いま)も、変えられない未来も。

 

 ──……その目で見る世界は、どう映っている?

 ──その目には、変わった未来が見えているのか?

 

 

 

 ──その目を、俺も…………。

 

 

 

 

 

 

「…………終わった」

 自身の放った矢が敵の体を貫いたのを観測し、ノアは地面へと降りる。

 凍った傷口が再生する様子は無く、地面から謎の『枝』や、それを伝う怪物の肉も現れない。

 ノアが死体となった王子を見つめていると、屋根を飛び越えてウェンディとアズレイユがやって来た。

「ノア、無事!?」

「ん、平気」

 心配するウェンディの声に、ノアは笑顔で返す。

 もう、怒りに囚われてはいないと。

 その意図を察したウェンディもまた、安心したように笑った。

「お疲れ様」

 

「…………ノ……ア……」


「!」

 三人のものではない声が届く。

 それは、死んだと思っていた者の声。

 王子の口が、ゆっくりと動く。

「魔……女……」

 ──うわ言か?

 ──……そう言えば、前にも魔女って────。

「に……げ、ろ……」

 

 

 

 

 

 

 

 情報は十分集まった。

 危険なモノは見当たらなかった。

 計画に変更は必要ない。

 

 

 魔女が、動き出す。

 

 

 

 

 

 

「その必要はないよ」

 

 声が届く。

 五人目の声が。

 

「初めまして。命の恩人さんと、そのお友達」

 

 王子の真横に女性が立っている。

 ボロボロの黒いコートを身に纏い、顔に浮かべるは優しげな微笑み。

 その場に居る誰もが、その笑みが形だけであることを恐怖と共に理解した。

 

「世界を終わらせる悪ーい魔女の、アルカナです」

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