猫/妹
ずっと、自分で手に入れてきた。
お母さんは私たちが多少大きくなった頃、どこかへ消えてしまった。
同じ路地裏の隅に産み落とされた兄弟たちは、一人一人と飢えて死んでいった。
私だけが、生きるために動いた。
歩く。
食べるために。
歩く。
生きるために。
すっと、一人で。
死ぬまで────
「…………水しかないけど」
貰えると思っていた訳じゃない。
期待もしていなかった。
ただ、もう体が動かなくて、鳴くことしか出来なかったから鳴いただけ。
でも、その人間は、私に水をくれた。
「いいよ。その契約を受け入れる」
「私は貴方を忘れるし、思い出さない」
「だから、私たちに居場所をちょうだい」
生から死へと裏返る境目。
その刹那の時に、鏡が私に契約を持ちかけてきた。
『私たちは姉妹として生きてきた』────そう記憶を塗り変えることを条件に、異なる世界へ渡る契約を。
迷う余地は無かった。
両手足が無くなった彼女に、私のをあげた。
どうせ人の形を取るんだ、偽りの体になるなら失っても不便は無い。
たった半年。
短いようで長い、面白い夢を見ることが出来た。
あの地獄では考えられないような日々を。
貴方もそうだったら嬉しいけれど、私にはもう、それを確かめる方法は無い。
楽しめましたか?
幸せでしたか?
私が妹で……良かったですか?
少しでも、そう思ってもらえたらいいな。
「恩、返したからね。お姉ちゃん」




