表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/445

[97]

『あの町へ行ってこようかな』

「あの町・・・でございますか」

『うん ドゥクティグ卿のところだ 運河を使えば日帰りもできるだろう

 ・・・いや数日は掛けたいな 卿から色々と教わりたいこともある』


「こちらにお呼びすることも可能だとは思いますが ご訪問の方がよろしいのですね」

『ああ あれからどう変わっているかも知りたいしな 前回は町をゆっくり見ることもできなかったから 町の様子も見て回りたい』


「かしこまりました お日にちはいつに致しますか?」

『今週と来週の中で 後は卿の都合に合わせてほしい それと

 大袈裟にしたくはない 出来る限り少人数で行こうと思う』

「承知いたしました 直ちに連絡をお取りします」

『ああ頼む 私は陛下に許可を頂いてくる』

「それもお伝えして参ります」

『ありがとう それでは任せるよ』

早速ロニーが卿へ送る書簡の手配に向かった。


ベンヤミンに伝えた方がいいか・・・。

視察への同行を願い出てくれたのだ。そしてあの町は私の中でも特に重要な意味を持つ町だ。一度はベンヤミンと共に訪れておきたい。

そう思い、ベンヤミンへの手紙を認めることにした。



運河は偉大だ。翌日の午後にはベンヤミンと卿からの返信が同時に届いた。

『夏の間は町から出ない為いつ来ても構わない とのことだ』

先に卿からの返信を確認する。

次にベンヤミンからの返信。こちらも是が非でもと快く同行を希望する内容だった。


『それなら早い方がいいな 二日後の朝出発したい 船の確認を頼む』

「船は押さえてありますので 騎士団で護衛の手配をして参ります」

『流石早いな ではその旨卿に認めておくよ』

「すぐ済ませて参ります」


そうだベンヤミンへも返事を送らなくては。

出発の日と、一応船で行くことも記して封をする。卿への手紙と合わせて届けに行く。騎士団の方が時間がかかるだろうから、ロニーと入れ違いになることはないだろう。



二日後の朝、船着き場でベンヤミンと合流した。

今はただ広く閑散としているが、この地こそがマーケットの建設を進めようとしている場所だ。


『おはようベンヤミン 急で悪かったな』

「おはようレオ いや声をかけてくれて嬉しかったよ」

『二~三日の予定だが細かなことは決めていないんだ』

「俺は大丈夫 新年度が始まるまで予定はないよ」

『それを聞いて安心した では行こうか』


話しをしている間にも次々と荷物が積まれていく。夏場の近場への旅だ。あっという間に荷積みも終わり出航の時間となった。


この船には私たちの他、王宮から手紙の配達人も同乗していた。その者はノシュールまで向かうそうだ。運河が開通してまだ数週間、一般にはまだまだ浸透していないらしく、旅の足に使われるようになるのは何年も先のことだろう。そう、いずれは他領への観光も気軽にできるようになればいいと思う。

今は当初の目的であった物資の輸送で活用して行ければ充分だ。


「船って思っていたより速いよな 風が気持ちいいよ」

『そうだな 馬車に比べて揺れも少ないし快適だ』

ものの数分で跳ね橋を通過した。橋を過ぎると王都の外だ。

船からの景色が物珍しく、飽きることなく景色を見続ける。


「レオ 子供みたいな顔になってる」

『そうか うんすごく楽しい』

「凄いよな レオが作ったんだぜ これ」

『それは違う 私は地図に線を一本引いただけだ』

測量をしたり、計算をしたり、実際に工事を行ったり・・・多くのものが係わって完成したものだ。私がしたことはそのきっかけに過ぎない。


「その一本が大きいって言うんだ 素直になれ」

『・・・そうだった つい先日にもアレクシーに注意されたばかりだった』

アレクシーと鍛錬した初日のことを思い出す。


「何?アレクシーに何か言われたの?」

『ああ 私には自信が足りないって その通りだなと思った』

「なるほどなー まぁさ 自信家で鼻持ちならない王子なんてのは御免だけど 確かにレオはもう少し自信持っていいと思うな」

『そ・・うなんだろうな・・・』

人の上に立つ立場のものがいつも自信なさげに振舞っているのは、確かによいと言えない。客観的に考えれば私にもすぐにわかるのだ。


「いい考えがある 聞きたい?」

『おしえてほしい』

「太るんだ そうだなー今の倍くらい?で 髭も生やせよ 威厳出るぞ そうだ髪も伸ばして・・・」

『聞いて損した』

「形から入るってのもあるじゃないか」

ベンヤミンは言いながら半分笑っている。

『陛下より威厳出してどうするんだよ』

答えながらやはり我慢できずに笑いが漏れた。

父上も髪型こそ数年前から長く伸ばすようになったが、以前と変わらず細い体型を維持しているし、髭も生やしてはいない。それでも圧倒的な王の威厳を醸し出しているのだ。


『まぁ外面だけ繕ってもな』

「だな 太ったレオは想像できないしな」

『この案は却下だな』

「残念だが仕方ないな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ