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デニスから茶会の案内が届いた。領から戻ってきたようだ。
参加の返事を認めて封をする。
ホベック合宿から戻って以降、1日の大半を自室で過ごしていた。旅程の詳細を決めるためだ。事前にロニーが、手紙の配達を担当している部署で写してきた地図を参考に計画を練る。
この地図には王都から各領地までの日数が記入されている。今私たちが見ている写しは、通常の配達用の日数が書かれた地図だ。これの他[特急]という地図も存在するらしいが、急いで移動する必要のない旅だ。そちらが必要になることはない。
こうして忙しく頭を使い続けることが、今の私には好都合だった。ノートの文字が読めなくなるほど記憶が薄れてしまったことに、考えを巡らす暇がなくなるからだ。もし今、ゆったりと考える時間があったなら、どこまでもそれに囚われてしまっていたことだろう。
『茶会の前に仕上げなくてはいけないな』
最初の提出がそのまま採用されるとは思っていない。まずは原案作りだ。そこまでは済ませたい。
「茶会はいつのご予定ですか?」
『3日後だそうだ』
これにはロニーも意外だと言う顔をした。
「随分と急なお誘いでございますね」
『うん 珍しいな』
ロニーに返信を渡して地図に戻る。大まかなルートは既に決まった。どの領にどの程度の日数を当てるか、資料を見ながら1箇所ずつ検討を進める。文字や数字だけでは今ひとつわからないが、それを確かめるために行くのだ。とりあえず今はその数字だけを頼りに決めるしかない。
ステファンマルクに公爵家は2つ。ダールイベックとノシュールだ。侯爵は25、そのうち2つは各公爵家が所有している。ノシュール家の嫡男ケヴィンが名乗っているデルリオ侯爵がその一1つだ。ヴィルホもいつでもリリエンステットを名乗れるはずなのだが、そういやその話はしたことがなかったな。
少し逸れたが、侯爵家の領地は23だ。ここに公爵家を足して25。
伯爵はぐんと増えて78だ。うち領地を治めている伯爵家は30。合わせて55がこの国の全領地の数だ。
イクセルのベーン家、ヘルミのアルヴェーン家、アンナのエクレフス家は全て領地持ちだ。ロニーも伯爵家の出だが、ロニーの家は領地を持たない。この線がステファンマルクで言うところの高位貴族の境目とされている。
ソフィアのボレーリン家だけは特殊で、ソフィアの祖父がボレーリン侯爵、父は現在クルーム子爵を名乗っているわけだが、クルーム子爵領という領地名が存在している。クルーム子爵とその嫡男が領地を任されているが、国の区分上は纏めてボレーリン領とされる。
クルーム領は見ておきたい。
王都から最も遠い位置にあるのがクルーム領、この機会を逃すと生涯訪問の機会が訪れないかもしれない。その他直轄地の中にもいくつか見ておきたい町がある。
1年では足りないな。
なるべく東部の町は周りたい、可能なら全て。近郊の町はまた別の機会もあるだろう。
ダールイベック領、この国で最も広い領だ。ダールイベック家の本邸までも3~4日、そこから港へはさらに数日かかる。2年後にはまだ運河も完成しないだろうから、これが現状では最速だ。
やはり、ダールイベックへは来年行こう。
来年の夏休みを丸々当てれば、ダールイベックを一通り見て回ることはできそうだ。
「戻りました」
デニスへの返信を渡しに出ていたロニーが戻った。
『ロニーこちらへ』
向かいの席を勧めて作業の続きをする。
『ダールイベック領へは次の夏に行こうと思う。それと東部で特に見ておきたい町には印をつけた。資料を纏めてもらえるか。私は印以外の町を見ていく』
「かしこまりました」
2人で手分けをして資料の確認だ。
領地別の資料は、どの領地も大抵は細かく記されているのだが、直轄地となるとどうも代官による差が激しい。資料が少ないからと言って重要な町ではないとも言い切れない。だがすべてを周る時間はないのだ。難しいな
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茶会の前日夜、ようやく全ての資料が完成した。即、陛下へ届けに向かう。
『遅くに失礼します』
陛下はまだ執務室にいた。
「構わないよ、そろそろ切り上げたいと思っていたところだ」
『完成しましたので、お持ち致しました』
出来立ての資料の束を陛下に手渡す。
「うむ、預かろう。写しは取ってあるか?」
『いえ、これで全てです』
たった今完成したため、写しを用意する時間がなかった。失敗だ。
けれど、陛下は気にするご様子もなかった。資料の準備が未熟なことには目を瞑っていただけるようだ。
「わかった、レオの分も写させよう」
『ありがとうございます』
次からは忘れずに写しを用意しよう。
「国内の調整だ。時間はまだ充分あるからこちらは問題ないだろう。レオは土地の選定を進めなさい」
『わかりました』
マーケットの予定地のことだ。これはもう目星がついている。確認のために一度行けば問題ない。
陛下は資料を数枚ぱらぱらとめくり、軽く目を通し始める。
「来年ダールイベックへ行くのか」
『はい、領地の位置や町の数から判断してそれが良いと考えました』
「なるほど。
ダールイベックなら調整も必要ないだろう。いつでも迎え入れる準備は整っているだろうからな」
いやいや、そう決めつけてかかるのはよくないです、陛下。
『いえ、そうおっしゃらず打診はお願いいたします』
「ああ、フィルに直接話しておこう」
大丈夫だろうな?
最後にもう一度念を押した。
『忘れずに打診をお願いします』




