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朝、やはりいつもより早くに目が覚めた。

枕が変わると眠れないなどという繊細さは全く持ち合わせていない。昨夜もぐっすりと眠った。多分気持ちが高ぶっているんだろうな。小さい子供みたいだ。

手早く着替えを済ませて訓練場へ向かった。アレクシーが来るまで走ろうと思ったのだ。

「よう!お早う」

『早いなアレクシー お早う』

「レオは絶対約束の時間より先に来るだろうと思ったからさ 俺も早く出てきたよ 走るんだろう?」

『そうだな 走りたいな』


「レオ走るの好きだよな 剣の鍛錬と同じくらい好きそうだ」

並んで走りながら会話を続ける。

『そうかもな 走るのは好きだ 走っている時は頭の中からっぽにできる』

「そういう走り方もあるんだな 俺なんていつも早く終われってことばかり考えながら走ってるよ」

『ははは・・・そんなに嫌なのか』

「好きなやつの方が少ないと思うぞ 疲れるし」

『それは残念だ』



『もう十年なんだな』

「ん?」

『アレクシーたちと知り合って十年が経ったってこの間気がついた』

「そうだな もうそんなに経つんだな」


『皆さ それぞれ自分の将来見据えていて その為に努力もしていて実も結び始めている 素晴らしい才能の持ち主ばかりでさ 改めていい友人に囲まれていたんだなと思ったよ』

「うん」

『私は何しているんだろうな 私には皆のように突出しているものが何もない 努力しているつもりになっていただけで何もしてなかったんだな』



アレクシーが急に立ち止まった。私も足を止め振り返る。

「逆だよレオ 完全に反対だ」

『どういう意味だ?』

「レオが俺たちに努力をさせてくれたんだよ 少なくとも俺はそうだ レオと並びたいから レオと共にありたいと願うからこそ俺たちは頑張ってこれたんだ」


「くさい言い方をするとさ レオは光なんだ 俺たちにとっての

 あー自分で言っててむず痒くなってきた とにかくあれだ レオは存在しているだけで既に才能なんだよ」

『そんなわけ・・・』

「わかった!思い出した[カリスマ]だ 授業でこの言葉を初めて聞いたとき すぐにレオが浮かんだんだ」


「レオの突出したところ 他の誰もが持っていなくてレオだけが持つものはカリスマだ」



『なんと答えたらいいのかわからない』

「答えなくていいんだよ カリスマは本人が言う言葉ではなくて周りがそう認めるものなんだからさ」


「だから取り柄がないとか二度と思うなよ」



『・・・わかった ありがとうアレクシー』

「しかしあれだな 才能に溢れすぎるってのも問題なんだな レオがそんなこと考えているなんて思いもしなかったよ デニスに聞かせたら冗談抜きで腰抜かすと思うぜ 第一にだな 語学ひとつ取ってみたってだな レオ何ヵ国語話せるんだよ 五ヵ国語だぞ!そんなやつこの国に何人いると思ってるんだ」

『いやホベック語はまだ使えるとは言えない・・・』

「来週のこの時間には間違いなく数に入っているよ その為にここに来たんだろう」


「レオに足りないものが解った ようやく解ったわ

 自信だよ レオに唯一欠けているものが自信だ」

『自信か・・・そうだなそれは認める』

「周りから言われて簡単に身に着くものではないとはわかる でも自信持てよ」


『以前・・・

 以前ロニーにも似たようなことを言われたことがあった』

「そうか」

『その時はさ 認めてもらえたことが嬉しいし安心もしたはずなんだ でも時間が経つと忘れてしまうんだろうな』

「それなら忘れないよう俺が時々言ってやるよ レオは凄いやつだ自信持てってな」

『洗脳か』

「そうだな 洗脳してやるよ」

恐ろしいなと言いながら笑いあった。


「さ!そろそろ走るのは止めて打ち合おうぜ ついてきて」

アレクシーが向かった先にあったのは射場だ。鍵を開けて中へと入っていく。」

『射場で剣の稽古してもいいのか?』

「ランドルッツ卿に許可貰ってあるから大丈夫」

『そうなんだ』


「よし!始めよう」

アレクシーとの鍛錬はヴィルホとはまた別の緊張感がある。兄弟だけあって、いやダールイベックだからと言うべきか、アレクシーの剣戟もとても美しい。それに加えてアレクシーの場合、美しいだけではなく何を仕掛けてくるのかわからない緊張感があるのだ。


『アレクシーとは久しぶりだが楽しいな』

「俺も 一週間限定なのが残念だよ」

『ヴィルホは本気出してくれないからな 厳しいのに甘い』

「そうなんだ 俺にもちょっとは甘くしてくれていいのにな って!えっ!」

『一本いただいた』

「・・・今のはちょっと油断した」

『そうか?油断しているようには見えなかったが』

「・・・次だ!」




「この辺にしておく?飯食う時間なくなっちまうだろう 先に風呂入りに行こうぜ」

『風呂もあるのか?』

「あるよ 寮に大きいのがあるんだ サウナもあるぜ」

『風呂にする』

「そう言うと思った」



『はぁーっいいな寮暮らしも 毎日この風呂に入れるのか』

「いいだろ 騎士科に入りたくなった?」

『なった ランドルッツ卿推薦くれないかな』

「絶対くれるわ ・・・レオバッキバキだな 身体出来上がってるじゃないか ほんと王子にしておくの勿体ないわ」

『一度聞いてみたかったんだけど・・・』

「なんだ?」

『アレクシーの思う王子像って絶対筋肉ないよな』

「・・・」

『ペンしか持ったことないような男を想定しているよな』

「・・・」

『何の影響だ?幼い頃に読んだ絵本とか言わないよな?』

「・・・」

『何て題名だ 国中に閲覧禁止令出す』

「ちょっと待て!」

『言え!』

「それは暴君すぎる」

『有害図書だろう 国民のためだ』


「・・・スイーリもよく読んでいたぞ 多分」


『・・・卑怯だぞ』

「調略も戦法のひとつさ 特に正面から勝てない相手には重要だ』


同時に我慢の限界を超えたらしい。大爆笑して風呂から出た。



「俺も食堂寄って行くわ 昼まで鍛錬していく」

『そうか   いいな・・・』

「なんだよホベック語より鍛錬したいってかー」

『・・・皆には言うなよ』



「おはようございますレオ様 あれ?」

『おはようノア こっちはアレクシー知っているよね』

「邪魔していい?」

「もちろんどうぞ!ダールイベック先輩」


「「おはようございます」」

『おはようマルクス ルーペルト』

「ダールイベック先輩も寮に泊まっているのですか?」

「俺は朝来たところ 昼には邸に帰る」

「そうでしたか」


「ホベック語これしかいないのか 少ないんだな」

『ああ ベンヤミンを入れて五人だ アレクシーは何取っていたんだ?』

「俺はパルード語 でも騎士科ではメルトルッカ取ろうと思っている」


それを聞いてマルクスが驚いた声を上げた。

「騎士科でも座学があるのですか!」

「おいおい脳みそまで筋肉にする科じゃないんだぞ 座学もある」

「知りませんでした・・・」

「とは言っても本科のような算術や歴史なんかはないけどな 必修だと人体学とか ベーレング語も必修だな 本科生が午後は訓練場を使うだろう あの時間は専ら騎士科の座学の時間に充てられているんだ」


『何故パルード語をやめたんだ?』

「あーパルード語をやめたと言うよりも メルトルッカ語が必要になったから かな

 原則本科で履修した外国語を取る決まりならしいが 頼み込んでメルトルッカにしてもらった」

「必要に ですか」

「そ 俺の主がメルトルッカに行くことになったからな 護衛するのに言葉わかる方がいいだろう?」

『アレクシーそれ・・・』


「まーあれだ それなりの成績取っておくといざって時融通も利かせてもらえるってわけ だからお前たちも頑張れよ」

「はい・・・」

「それなりの成績・・・」

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