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「じゃあ行こうか」

昨日の打ち合わせ通り二手に分かれて行動開始だ。

『ちょっと待って・・・

 ソフィア 女性の意見もあった方がいいだろう ベンヤミンたちとレストランへ行ってもらうことはできるかな?』

「わかりました お任せください」

「ソフィア様 私もご一緒いたしますわ」

「二人とも助かるよ 女性の意見も聞けた方がより良いからね」

というわけで、デニス、ベンヤミン、ソフィア、アンナがレストランへ向かうことに決まった。

二台の馬車に分かれて乗り込む。


「じゃー後で」

「おう!後で」


私たちはクリスマスマーケットへ向けて出発だ。


毎年11月の下旬ころから国中至る所でマーケットは立ち上がる。最初のうちはまばらだが、この時期にもなると出店は出揃い連日賑わいを見せているに違いない。


「今年は王都のマーケットに行けなかったから 凄く楽しみにしていたんだー」

「イクセル様はまたポリーナ様へのお土産探しですね」

「うん!良いものがたくさん見つかりそうな予感がしてきたよ」

この分だと冗談抜きで馬車一台がポリーナへの土産で埋まりそうだな・・・。


少し離れた場所で馬車を降り、歩いてマーケットへ向かう。遠くにツリーが見えてきた。

マーケットの入り口付近はテントを張った仮設の店舗だ。仮設とは言っても入り口近辺は大変人通りが多く常に賑わう為、人気の場所となっているはずだ。王都のマーケットは毎年抽選で店舗の場所が割り当てられるが、ここノシュールはどうなのだろう。


色とりどり華やかなオーナメントの店が並んでいる。クリスマスツリーを飾る邸では毎年家族の数だけオーナメントを買い足すそうだ。そうやって年々ツリーを豪華にしていくらしい。

赤や緑に混ざって素朴なオーナメントを売る店もちらほらと見かける。白樺の皮を細工したものだ。普段は籠や箱を作っている職人がこの時期だけ作るこれらの細工もなかなかに人気がある。


毛糸や毛織物、毛皮などを使った商品の店が続く。どうやらノシュールのマーケットは商品毎に売るスペースが分かれているようだ。


オーナメントを見ていた辺りで既にイクセルとははぐれていた。(相当買い集めているな・・・)

ツリーまでは一本道だからそのうち合流するだろう。

それにしても着心地のよさそうなニットがいくつも並んでいる。毛皮や皮製品に手が出ない平民には特に重宝な、いや必須なのがニット類だ。

「レオも気になる?着やすそうだよなこれ」

アレクシーもニットが気になっていたようだ。

『うん それに暖かそうだ』

セーターやカーディガンの他にも帽子や手袋のような小物も数多く並べられている。その中から一つ、グレーの糸で編まれたケーブル編みの帽子を手に取った。

『これ買う』

「早!じゃあ俺も何か買おうかな」

『スイーリ ヘルミ二人は気になったものある?』

声を掛けたら二人はミトンを手にしていたところだった。カラフルな毛糸で花柄やツリーなどの編み込み模様が入っている。

『可愛いね ここへ来た記念に一つずつ贈らせてよ 好きなものを選んで あとソフィアとアンナの分も選んでもらえるかな』

「ありがとうございます!スイーリ様どれにしましょうー沢山あって迷ってしまいますわ」

「ありがとうございますレオ様 少しお待ちくださいね」

『いいよ 気にせずゆっくり選んで』

「よし!俺がデニスたちの分何か買うわ 帽子でいいかな」


旅先でぶらぶらと土産物を探す・・・なんだか懐かしいな。


土産も選んでツリーの下まで到着した。ツリーは広場の中央にあって、その周囲には食べ物の屋台がずらりと並んでいる。

スープの屋台が多い。どの店も大きな鍋から湯気が立ち上っている。この湯気が冷えた体には充分ご馳走だ。グロッグやショコラショー、やはり温かいものの店が目立つ。私も湯気に釣られているのかもしれない。

食べ物は、串に刺したミートボール。これは注文すると温かいソースをかけてくれるようだ。焼いたジャガイモ、サンドイッチのようなものもある。ワゴンにどっさり積まれているのはジンジャークッキーだ。


「この光景を見ると一年が無事に終わったと感じますね」

ヘルミがツリーを見上げて呟く。

「はい 今年も何事もなく終えられそうでよかったですわ」

「あら何事もなかったとは聞き捨てなりませんわね スイーリ様」

ニヤリと笑うヘルミにスイーリが慌てている。

「あ!これは悪いことがなくてよかったという意味で!」

「ふふふ わかっていますわ 今年も良い一年でしたわね」

「ええ」


『はい 冷えただろう?』

二人にショコラショーを渡す。

「温かいものが飲みたいと思っていたところなんです ありがとうございます」

「ありがとうございます 温かいー」

『冷めないうちにどうぞ』

「「いただきます」」


「レオはこれでいいよな?」

アレクシーの手にはグロッグのカップが二つ握られていた。

『ああ ありがとう』

カルダモンをたっぷりと効かせているのが私の好みだ。生のオレンジが入っていると更に旨い。

この店のグロッグはオレンジピールとレーズンが入っているようだ。

アレクシーと軽くカップを合わせる。

「『乾杯』」


それぞれがほぼ飲み干したころ、ようやくイクセルがツリーに到着した。案の定彼とその従者四本の腕にはずっしりと荷物がぶら下がっていた。

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