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城に戻る。デニスたちはまだ戻ってきていないらしい。

サロンで帰りを待つことにした。


「グロッグの隣がいいんじゃないか」


『私もそう思う』


アボカド入りブリトーの店を出す場所だ。


「じゃー場所は決まりだな 。後はデニスたちが戻るのを待つだけか」


「そうだ、これイクセルの分」


アレクシーがニットの帽子を渡す。黒に白の編込みが入っていて大きなぽんぽんがついている。


「僕に?ありがとうー!え?アレクシーも買ったの?」


「俺のはこれ」


アレクシーが被って見せたのは白いケーブル編みの帽子だ。これも大きなぽんぽんがついている。


「こういう帽子僕初めてだよ、面白いね」


「レオも被ってよ」


先程手に入れたグレーの帽子を被ってみせる。帽子を被る機会はほとんどなかったから、なんだか自分でも新鮮だ。


『どうだ?』


「おっ、なんか雰囲気変わるね」


『それが狙いなんだよ』


こんなことを言い出したら、イクセルあたりが興味津々で聞いてくることは承知済みだ。もちろん聞かれたら答えるよ。


「なになにー?もしかして変装用?」


『変装というわけでもないけどね。王都で市場へ行く時とかに使おうと思って』


市場へは繰り返しになるけれど、授業の一環で行っている。つまりはそれなりの人数で訪れると言うことだ。そんな場でこの帽子ひとつで別人になれるとはいくら世間を知らない私とて思ってはいないよ。


「王都の市場行ったことあるのか。道理で慣れてると思った」


『数回行っただけだけれどね。王都の市場も見ごたえあるよ』


「私たちはこれを」


スイーリとヘルミがミトンを取り出す。


スイーリが選んだミトンは白とマスタードイエローのボーダーで、白い部分にはチューリップ柄が並んでいる。いつも大人びたデザインのドレスを着ているので、こんな可愛らしい柄を選んだのは意外だったな。ヘルミのは淡いブルーに白い六花の編込みが入った伝統的な柄だ。


「わー!ミトンだ!二人とも可愛いね。うんとても可愛いね」


「ふふ、ポリーナ様にも使えそうな小さいものもありましたわよ」


「ほんと?あんなにじっくり見たのに気がつかなかったよ。次はちゃんと見つけなきゃ」


なんだかイクセルがしょんぼりしているみたいだ。

しまったな、ポリーナの分も買っておくんだった。


「ただいま。お!何か買い物してきたのか?」


デニスたちが戻ってきた。


「おかえりなさい皆さま。お疲れでしょう、まずは温まってくださいね」


「いや俺たちはずっと建物の中にいたから平気。マーケットの方が寒かっただろう」


「もう充分温まりましたから平気ですわ」


お互いを労い合っているヘルミとベンヤミン。ともかく無事戻ってきて何よりだ。



「ソフィア様、アンナ様。こちらレオ様からです」


「私たちもいただきましたの、ほら!」


両手にはめたミトンを見せている。


「まあミトンですね、今開けてみても?」


『もちろん』


ソフィアとアンナが包みを開けて歓声をあげている。ノシュールにいる間でも使ってくれたら何よりだ。


「男には帽子。これがデニスので、こっちはベンヤミン」


「おおーありがとう。でもどういう風の吹き回し?」


デニスとベンヤミンも頭に帽子を被って見せ合っている。なんだ、皆似合うじゃないか。


「レオがニットの帽子買うって言うからさ、ついでに皆の分も買ったんだ」


一通り見せ合いをしてから、ようやく本題に入ることになった。


「こっちは全て上手くいったよ。その場で試作をしてさ、2種類出すことで決まった」


「サーモン入りとチキン入りの2種類ね」


「早速明日から始めたいと言っていたけど、場所はどうだった?」


時間がかかったのは試作をしていたからだったんだな。気持ちのいいほど順調に話が進んでいく。


「レオとも話してグロッグを売っている店の隣がいいと思った。グロッグは出てくるのが早いからほとんど並んでなかったからな。ブリトーが多少混雑しても大丈夫だろう」


「なるほどね。明日は最初に決めたように無料で配ることにしたから多分すぐになくなると思うが、混雑は避けられないだろうからな」


未知の食べ物だ。殺到することはないだろうけれど、他の店を妨害するような混雑は避けたいところだ。グロッグで冷えた身体を温めつつ、順番を待ってくれるのが理想だな。


「レストランでも正式にメニューに加えたいって」


料理人は新しい食材への抵抗がなくていい。こうしていろんなものがどんどん広まっていけば嬉しいと思う。


『よかったな。これで倉庫の隅に積まれたままでいることもなくなるな』


「ああ、早く次の便が来てほしいくらいだ」


「今からアボカドを店へ運ぶから、それに場所の説明を書いた手紙を付けるよ」


用意してくる、とデニスが出ていく。


「これが終わったら次は周年祭だね!」


「明日の夜には父上と母上も着くはずなんだ」


ノシュール公爵夫妻も周年祭に合わせて王都から領地へ戻ってくる。今回は準備の全てをデルリオ卿が任されたため、ギリギリまで王都での仕事を優先したらしい。



はぁー、とうとう周年祭か。少し、いやかなり気が重い。

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