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ようやく、ようやくお城が見えました。今レオ様はあのお城にいらっしゃるのね。

アレクシー兄様と私はレオ様たちから遅れること二日、ノシュール領へやって参りました。休憩もそこそこに一日中馬車を走らせて、冬道とは思えない早さで到着しました。と、御者が申しています。急がせて悪かったわ、帰りまでのんびり過ごしていて構わないからそれで許して頂戴ね。


途中の町で合流した荷馬車も連れて門をくぐります。ああ早くお会いしたいです、レオ様。

馬車を降り、城へと案内されます。デルリオ侯爵に出迎えていただきました。

えっ?

「殿下と弟たちは今港へ行っているのだよ そうはかからないはずだから部屋で休んで待っているといい」

そ、そんな・・・・・・


余程落胆したように見えたのでしょうか。

「このまま港へ向かい合流します」

兄様が素晴らしい提案をしてくださいました。

帰るまでのんびり過ごしてなんて言ったそばからごめんなさい、もう少しだけ頑張っていただくわ。


港には驚くほど大きな船が停泊していました。その船へ向かって馬車はするすると進んで行きます。

あ!向こうにいらっしゃるのは!!

黒い細身で短めのコート、ウエストが軽くシェイプされていて襟は黒い毛皮があしらわれています。なんて麗しい・・・全身黒のレオ様は初めてお見かけいたします。色気!色気がダダ洩れです。まだ少年と言っていい御歳にも関わらずこの色気、今からこれで将来はどうなってしまうのでしょう・・・恐ろしいです。いえ期待値が際限なく上昇し続けます。


うっとりと見つめている間に着実に足は前へと進んでいたようです。レオ様まであと数歩のところまでたどり着きました。

『スイーリよく来たね 疲れただろう 休まなくて平気か?』

平気です!ちっとも疲れてなどいません!お会いしたかったですーレオ様ー!!

心の中ではお伝えしたいことが爆発していると言いますのに、いざレオ様を前にするとその半分も言葉が出てきてくれません。さあ早くお返事しなくては!なのに・・・

「レオ 気遣いは無用だ 早く行きたいと煩くて大変だったんだ 労うのなら妹ではなく馬を労ってやってくれ」

「酷いですわ アレクシー兄様」

そんなこと告げ口しなくてもいいじゃない、酷いわ!

ああ!でもレオ様の眼がとてもお優しい・・・もしかして早くお会いしたかった気持ちが伝わったのでしょうか、そしてレオ様も少しは私に会いたいと思ってくださっていたのだとしたら・・・

嬉しい!今日からしばらくの間毎日一緒にいられるのですね、夢みたいです。


それからお城へ戻り、昼食をいただきました。

展望室という一番高いところにあるお部屋で、遠くまで海が見渡せる素敵なお部屋です。先程の港はあの場所なのね、大きな船が停まっています。レオ様に夢中で船を見た記憶が全くありませんでしたが、とても大きな船のようです・・・そうね確かに大きかったわ。少しだけ思い出しました。


「・・・僕何日かレオと一緒に食事していて気が付いたのだけれど レオって少食なんだね」

なんですって?!またもや聞き捨てならない言葉が聞こえてきました。

レオ様は少食?これは初耳です。確かにレオ様はとてもほっそりとしておられます。それでも同じ年のベンヤミン様やイクセル様も同じように細くていらっしゃいますし、身長は二歳年上のアレクシー兄様とほぼ変わらないのですから、充分に成長はなされているはず。


『そんなことないと思うぞ』

レオ様は真っ向から否定なされました。少食情報はガセ?新情報ではないかもしれません。ここは注意深く聞いていなければ!


『多分運動が足りてないだけだと思う』

わかります!わかります!それですね!間違いありません!

ヴィル兄様が言っていた通りです。「殿下は鍛錬の虫なのだ」と。旅の間はお前が鍛錬のお相手を務めるようにと、アレクシー兄様に命じておりました。

するとみるみるうちに今から鍛錬を始めることが決まったようです。ご、ご一緒させていただいてよろしいかしら。邪魔は致しません、隅っこで大人しく見学致しますから!


「スイーリ様とゆっくりお話しもしたいですし 私たちはお茶をいただいておりますわ」

なんてことをおっしゃるの・・・いえそうですわね、ご令嬢は訓練場などに足を踏み入れたりなどしませんもの。

残念だわ、残念極まりないわ。


ヘルミ様のお部屋で集まってお茶をいただくことになりました。一度お部屋に戻り、旅のドレスから着替えて、髪も整え直します。そうだわ、お気に入りの砂糖菓子をお持ちしましょう。

「カリーナ 菫の砂糖菓子はどこにあるかしら?ひと箱用意してもらえる?」

「はい すぐにご用意いたしますね」


ほどなくしてヘルミ様の侍女が支度が整ったことを伝えに来ました。

カリーナを伴いヘルミ様の部屋へ向かいます。


「ヘルミ様 お邪魔いたします」

「スイーリ様 お入りください お待ちしておりましたわ」

ソフィア様、アンナ様もいらっしゃいました。

見慣れない侍女も何名かいます。城の侍女でしょうか。

「ありがとう あとは私たちでやりますので 皆さん下がってよろしいですわ」

ヘルミ様のお声がけで侍女たちは退出しました。


「ふふ 私たちだけでのお茶会なんて ちょっぴりドキドキしますわね」

好奇心旺盛で、珍しいもの新しいことがお好きなアンナ様らしい発言です。

そうだ、これをお渡ししなくちゃ。

「私の好きな砂糖菓子ですの よろしかったらこれも召し上がっていただきたいわ」

「まあ綺麗ー!嬉しいわ!ありがとうスイーリ様」


最初はこんな風にいつもと変わらぬ和やかな雰囲気でした。



「レオ様は道中ずっと正装でいらしたんですの」

「レオ様は公式の行事にほとんどご出席されたことがないから 正装のお姿はとても貴重でしたわ」

「いつも以上にお美しかったわ」

「イクセル様ですら 王子様っておっしゃっていましたものね」

「馬車に酔った私たちにもお優しくて」

途中からヘルミ様とアンナ様の話題がレオ様一色になっていきました。ソフィア様も時々相槌は打つもののニコニコとするばかりです。


「あ あの・・・」

「スイーリ様 どうかいたしまして?」

「レオ様のお話しをお聞きになりたいのではと思ったのですが お嫌だったかしら」

いえレオ様のお話しはどんなことでも嬉しいわ。けれど、どうしてこんなにも不安になるのかしら。


「昨日の養護院でのレオ様 本当に素敵でしたわね」

「ええ私も何度も思い出してしまいましたわ」

どんどんと自分が俯いていくのがわかります。嫌だわ、聞きたいのに聞きたくない。



そしてこの一言が落ちてきたのです。

「スイーリ様もしかして」

「レオ様をお慕いしているのはスイーリ様だけだとでもお思いでしたの?」


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