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どうして今まで気が付かなかったのかしら。
ゲームの中のレオ様も圧倒的人気だったじゃない。今レオ様に夢中なのが私1人なはずがないわ。私が知らないところで、レオ様は大勢のご令嬢とお会いしているかもしれない。城の侍女だってレオ様に憧れていたとしても何らおかしくはないわ。そして何年も一緒に過ごしてきたこの友人たちー
そうよね、私は多くの方から恨まれているのだわ。レオ様に想いが通じたことに浮かれすぎて、周りが何も見えていなかったのね。
「ごめんなさい」
ヘルミ様が突然頭を下げられました。
「私もごめんなさい、スイーリ様」
続いてアンナ様も謝られます。
「え?あの。 いえ 私ー」
どうしてお2人が謝るの?どうお答えしていいのかわからず、しどろもどろになってしまいました。
「ふふふ 、私たちがレオ様をお慕いしていたのは本当です」
「でもスイーリ様とレオ様のこと、とても嬉しく思っていますのよ。本心よ」
ヘルミ様とアンナ様は恥ずかしそうに笑みを浮かべながら話を続けます。
「でね、今日でその気持ちと完全にお別れしようと話しておりましたの」
「わざと意地悪な言い方をしてしまいましたわ。ごめんなさいスイーリ様」
「そう、だったのですね」
私たちが知り合ったのはレオ様のお茶会がきっかけでした。歳の近い私たちが知り合った理由はレオ様だった。ヘルミ様とアンナ様がレオ様をお慕いするのも必然のこと、だったのね。
けれどレオ様はお1人なんですもの。願いが叶うのは、たった1人。
ごめんなさい、ヘルミ様もアンナ様もとても大切なお友達には違いないけれど、レオ様だけは諦めることができないわ。
「でも聞いてください、スイーリ様。レオ様の正装をご覧になったことおありになって?」
「いいえ一度も。」
スチルならーううん、今私のお慕いしているレオ様の正装姿は一度も拝見したことがないわ。
「まだ行事はこれからですし 、スイーリ様も直にご覧になれますわ。楽しみにしていらして」
ええ!ヘルミ様。楽しみで楽しみで待ち遠しいです。
「とってもとっても素敵なのよ。あのお姿を間近で見られただけで充分幸せだったわ」
わかるわ!アンナ様。視界に入れただけで多幸感が押し寄せるでしょうね。
「それと昨日の養護院でのお話しも聞いていただけますか?」
「是非聞いていただきたいわ。ますますレオ様に夢中になってしまいますわよ」
「小さな女の子が、ってスイーリ様?」
知らないうちに涙が頬を伝って流れ落ちていたようです。
「ごめんなさい、スイーリ様。私たちそんなつもりではー」
ヘルミ様とアンナ様が大慌てになってしまって。私の方こそ謝らなきゃ。これは悲しくて流れてきたのではないの。誤解なさらないで。
「違う、違うんです。あの、ありがとう。私ー」
大切なお友達を失ってしまったのかと思ったこと、2人の優しさが嬉しいことをお伝えしたいのに、どうしていつも大事な時に言葉が上手く出てこないのかしら。
ヘルミ様とアンナ様は私の手を取って包み込んで下さったの。ありがとう、ちっとも言葉にできていないのに、気持ちが伝わってくれたのかしら。
「私たちも素敵な男性を見つけて、スイーリ様に安心していただかなくちゃいけないわね」
「言うのは簡単だけれどー」
2人は冗談でも言い合うように、少し早口で話し続けて。
ええ、私もお2人が素敵な方と巡り会うことを心から応援したいと思うわ。なのに
「そうよね、レオ様が基準だと見つかりそうもなくて」
「初めて出会った方がレオ様だなんて、私たちはこの国で一番不幸かもしれないわ」
アンナ様の嘆きにヘルミ様も笑いだします。私も笑いたい気持ちだったけれど、懸命に堪えたわ。だって完全に同意なんですもの。レオ様を基準にしてはどんな方も色褪せて見えるでしょうから。
「レオ様とスイーリ様のこと応援しています」
「これからも変わらずお友達でいてくださいね」
お2人に励ましていただいて嬉しかった。とても嬉しいの、ありがとうございます。
「ありがとうございます、ヘルミ様アンナ様」
「あんなにスイーリ様のことを想うレオ様を見てしまったら、諦めるしかないですものね」
な な な な なんですって?!
「聞きたいですか?」
ア、アンナ様完全に悪いお顔になっています!声も低くなっているわ!
「き、聞きたいです・・・」
「皆でお食事をいただいている時など」
今まで聞き役だったソフィア様が話の続きを引き取りました。
「時々とてもお優しい目をされる時があって、そうそうイクセル様が言うには蕩けそうな目だそうですが」
その時の光景を思い出しているのか、3人とも微笑まれています。
「そのイクセル様が一度揶揄って、今スイーリ様のことを考えているだろうとレオ様に聞かれたのです そうしたらー」
「「「ああ考えていたさ」」」
3人の声がぴったりと揃いました。
「ふふふ、スイーリ様お顔が真っ赤ですわよ」
両手で頬を隠しますが、自分でもわかります、頬が熱いわ。
「さて!私たちの秘密も打ち明けましたし 'お別れ会'の続きをしましょうよ」
「ええ、今日だけは思う存分甘いものを食べてしまうわ!」
まだまだお茶会の時間は残っていますもの。4人だけの話をもっと続けたいわ。と思ったらソフィア様がいきなりの剛速球を投げてこられたの。
「アンナ様、いつもあれで我慢なさっていたの?」
「ソフィア様酷いです。いつもどれだけ私が我慢してきたことかー」
お2人は顔を見合わせて大笑いしています。ソフィア様のそんな笑い声は珍しいわ。もうわだかまりはありません。いつもの大切なお友達です。
「お茶が冷めてしまいましたわね 、淹れ直してきますわ」
一足先に笑いを引っ込めたソフィア様が、自らお茶を淹れてくださることになったみたい。
「ありがとうございますソフィア様。
新しいお茶が入ったらこの砂糖菓子をいただいてもよろしいかしら?先程から気になって堪らないの」
「流石は王都のスイーツ女王アンナ様ね」
アンナ様の食べたことがないお菓子を持ってこれてよかったわ。気に入って下さるかしら。
「スイーリ様が髪を下ろしていらっしゃるのは久しぶりね。お帽子もいつもとても素敵でしたけれど、私はスイーリ様のこの黒髪がとても好きだわ」
憧れる淡いブロンドの髪を持つソフィア様にそう言っていただけて、私は驚いてしまったの。黒い髪を褒めてもらえるなんて考えたこともなかったのですもの。
「そうですわよね。私も今日スイーリ様がお帽子を被っていらっしゃらないので驚きましたわ。とても美しい髪で羨ましいわ」
アンナ様にまで褒めてもらっちゃった。アンナ様やヘルミ様の前では髪を下ろしたことがなかったですものね。これからは帽子を被る機会は減ると思うの。黒い髪も悪くないと思えるようになったから。
「ありがとう、そう言っていただけると嬉しいわ」
その後はいつものお茶会のようでした。
いつかは4人で恋バナもできるようになるのかしら。それが待ち遠しいわ。




